●2007.X'mas CLUB silver!!
いつもは、飾り気のないごく普通の教室……だった。
質素な扉を開くと、とたんに聞こえるのはビートの利いたリズミカルな曲。
扉を閉めて、中に入っていくと、音楽にあわせてパラパラを踊りだす多くの人々と、それを先導する紗耶香の姿が見えた。
「次は右やーっ!」
紗耶香の額には汗が浮かんでいる。
その汗が散って、きらきらと輝いて見える。
「よっし、ええ感じやっ! この調子でどんどんいくでーっ!」
眩しいスポットライトは、紗耶香だけでなく、その場にいる者たちにも当てられた。
「おぅ、センセー、オツカレー!」
先ほどの熱気溢れるステージは、静かな元の教室へと戻っていく。
蘭童は、パラパラ教室で盛り上げてくれた紗耶香の頭を、ぐりぐりと撫で回し、冷たいオレンジジュースを手渡した。
「えへへー」
嬉しそうにジュースを受け取り、すぐさま、ちゅーっと飲み干す。
と、思い出したように紗耶香をあげた。
「あ、蘭ねぇパラパラサボったやろー!」
「いっ?! い、いや、その分集客に力入れてたじゃねぇか……な?」
実はパラパラが恥ずかしくて踊れなかった蘭童。それを紗耶香に突っ込まれ、若干、目をそらしながらもそう答えた。
「それにしても……アタシも人のこと言えねーけど、失恋して間も無いのに元気なお嬢ちゃんだよなー。ま、だからこそ今を、こーやって楽しく過ごせてるんだけどよ」
すとんと近くの机に座りながら、蘭童は話しかける。
「ヘコんでてもええことないしなー? カラ元気も大事大事ー!」
紗耶香は気にすることなく、蘭童の隣に座り、またジュースに口をつけた。
「……けどー、やっぱときどき泣きそぉー。むこう、何考えてンのか全然ワカランしぃ」
辛い今までのことを思い出したのか、紗耶香は思わず涙を滲ませる。
「今年はお互い男運に恵まれなかったけど、来年のクリスマスはダブルデートと行きたいもんだな、紗耶!」
ぽんと励ますように紗耶香の背中を叩く蘭童。
「うち、頑張るー」
そういう紗耶香を蘭童はぐいっと引き寄せて言う。
「メリークリスマス!」
「メリークリスマス、蘭ねぇ!」
ふふっと笑みを浮かべて微笑む二人。
と、紗耶香が思い出したように声を上げた。
「そうや、蘭ねぇ! ええオンナになる方法おしえてー!」
「ええオンナなぁ……」
「どんな男も一発で落ちるよーな!!」
「どんな男も?」
「特にそのおっぱい!!」
「なにっ!?」
紗耶香に凝視されるその胸元。果たして、その秘密は聞き出せたのか。それとも……。
クリスマスに行われたええオンナ講義もこうして、幕を下ろしたのであった……たぶん。
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