●Twilight Waltz 〜二人だけの円舞曲〜
キャンドルが灯され、楽団の生演奏が響く。
中庭の見える会場では、既に数多くのカップル達が踊っていた。
ゆっくりとした曲を聴いて、タキシード姿の啓は、そっと鈴音の前に立つ。
「参りましょうか？ お嬢様」
そういって、鈴音の手を取った。
「は、はいなのじゃ……」
今日の鈴音はいつもとは違う。
普段はツインテールにしている髪形を、束ねて後ろでアップにしている。
そして、大人びた黒のシックなドレスを着ていた。
かなり緊張しているのは、初めてのダンスだから。
失敗しないように……そればかり考えているようだ。
啓にエスコートされながら、鈴音はダンスフロアへと向かう。
そして、曲にあわせて踊り始めた。
「こ、これでいいのかえ？」
「そう、次は右」
啓に教えられながら、ゆっくりと覚えていく。
少したどたどしいが、次第にステップを踏むのに慣れてきた様子。
と、その瞬間。
ぶみっ。
ハイヒールの先で、啓の足を踏んでしまったのだ。
「す、すまぬ、慣れておらぬゆえっ」
あわあわと頬を真っ赤にさせながら、鈴音は謝った。
「……ん、大丈夫大丈夫、落ち着けって」
痛みを顔に出さずに、啓は小さく笑って、鈴音を抱き寄せる。
彼女を支えるかのように、しっかりと。
踊っている最中に、啓はじっと鈴音を見つめていた。
鈴音は踊りに集中しているらしく、気づいていないようだ。
「髪型変えたのか……うん、綺麗だな」
その言葉に鈴音はびくんと反応した。
真っ赤になって俯いている。
何かを言おうにも言えないみたいだ。
実は髪型は鈴音が一番、気を使ったところ。
それを褒められて、嬉しいやら恥ずかしいやら。
啓はそんな鈴音に微笑みながら、ダンスは続く……。
幻想的なラストダンスも終わり、二人は人気の無い場所へと来ていた。
気づけば外では、雪がちらついている。
「……Merry Christmas」
啓は正面から鈴音を抱きしめ。
「クリスマスプレゼント、な」
そう囁いて、離れると同時に、鈴音の首にアクアマリンのネックレスをかける。
「……ありがとうなのじゃ」
顔を真っ赤にさせながら、鈴音は嬉しそうに微笑むのであった。
| |
＆
九段下・鈴音 
