●街角の中で、永遠の時間を
いつもと同じ街並みのはずなのに、イルミネーションがあると、こんなに違う。
同じ場所のはずなのに、貴方と一緒だと、何もかも新鮮に見えるから、不思議だ。
「綺麗だねー」
「そうだな♪」
サンタクロースの服に着替えた2人は、そう言い合いながら街を歩く。もうすっかり夜遅いせいか、周囲はすっかり静まり返っている。他に人の姿もなく、サンタクロース達の逢瀬を、イルミネーションのかがやきだけが見守っている。
誰も居ないクリスマスの街を、2人で歩くのがとても楽しくて、どこまでもどこまでも、春菜と雅紀は歩いていく。
「春、疲れたか?」
「ううん、だいじょ……はわっ!?」
やがて歩き続けていた2人に忍び寄るのは、じわじわと広がる疲労感。気遣うように覗き込んだ雅紀に首を振ろうとする春菜だが、その返事を待たずに、雅紀は彼女の体を抱き上げた。
お姫様抱っこで。
「わ、わ、えっと……あー、こうやってみると、なんだか目線が違うね」
雅紀との急接近にどきどきしながら、春菜はふと、イルミネーションの方を向いた。
地面に立っていた、今までの景色と同じようでいて、でも、それは少し何だか違うように見える。
「そうか?」
「うん」
頷き返す春菜に、まあ、そういうものかと、小さく頷き納得する雅紀。
普段一緒にいても、こんなに違うものなんだねと呟きながら、春菜は、その景色をかみ締める。
「これが、まーくんの視線なんだ……」
まだ、彼について知らないことって、あるんだね。
何だか、ちょっぴり心がくすぐったくなる。これまでに知った彼のこと、それにまた新しい事実が積み重なる。まるで、2人の間に刻まれる思い出のように。
それはきっと、2人が共にある時間の長さを示すしるし。
「優しいトコでしょ、つんつんしてるとこでしょ……それからそれから」
だから春菜は数える。雅紀について知っていることを、ひとつひとつ指折りながら。
「ははっ、ありがと」
指折り数える春菜に、赤くなりつつ笑う雅紀。彼もまた、春菜の素敵な所をたくさん知っている。
「そうだな、たとえば……」
そんな雅紀の胸に、そっと春菜は寄り添う。
いろんな事を知っている。いろんな事を、知っていてくれる。
とっても大切な、あなた――。
「……だいすきだよ、まーくん」
それまでより、もっと深く寄り添って呟く春菜に、雅紀は唇を寄せて、そっと囁く。
「俺も愛してる、春」
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