●Memories at Christmas〜 happening 〜
二人の薬指に輝くのは、お揃いのシルバーのリング。
そのリングは、先ほど交換したばかりのクリスマスプレゼントだ。
リングを見つめ、笑みを浮かべる沙夜羅。
ふと、隣に居た神室と視線が合い、照れたように視線を移した。
「さて、そろそろ行くか」
沙夜羅と神室は、これから始まるダンスパーティーに参加する予定である。
ドレスとタキシードに着替えた二人は、ゆっくりと会場の中に入っていった。
こじんまりとしたレストランのダンスパーティー会場にて。
沙夜羅と神室は中を見渡した。数多くのカップル達が楽しげに踊っている。
実はこの二人。
ダンスパーティーに参加したのはいいのだが……ダンスの経験は無かったりする。
「折角だし踊ろう、沙夜羅」
神室に手を引かれながら、見よう見まねで踊り始める。
「こんな感じで……いいのかな?」
「ああ。たぶん大丈夫だ」
始めはぎこちない踊りの二人だったが、時間が経つにつれて慣れてきたようだ。
ステップはかなりいい加減だが、二人は楽しげに踊っていた。
「神室、上手くなってきたね?」
「沙夜羅もな」
そう囁きあった瞬間。
ずりっと神室は何かを踏んでしまった。
「きゃっ!?」
「あっ!」
どさりと二人は床に倒れこんだ。沙夜羅の上に神室が倒れこむ形で。
その時間は僅か……だったと思う。
けれど、この二人にとって、長い時のように感じられた。
真っ赤になりながら、神室と目が離せない沙夜羅。
それをじっと見つめ返す神室。
神室はそっと、沙夜羅の顔に自分の顔を寄せて……。
「ご、ごめんなさいっ!」
その沈黙を破ったのは沙夜羅。嫌だったからではない。
周りの視線に気づいたからだ。
沙夜羅はそのまま、レストランのバルコニーへと出て行き、神室はそれを呆然と見送っていた。
と、神室も周りの視線に気づいたようだ。思わず苦笑を浮かべ、立ち上がる。
そして、沙夜羅のいるバルコニーへと向かった。
「沙夜羅」
「……神室。ご、ごめんね。でもっ、誤解しないで欲しいの。……その、あのときは周りがいて、その……」
「もう言わなくてもいい。分かったから」
泣き出しそうな沙夜羅を抱きしめ、神室は彼女の耳元で囁いた。
「続きは……」
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