浅木・日那 & 上陵・緋鷹

●To the way of the one scene of the movie

 その日。緋鷹は日那をつれて、あるブディックにつれてきた。
 来た事の無い店に日那は、緊張した面持ちで、部屋をぐるりと見回す。
「こっちも捨てがたいんだが……」
 緋鷹は店員と共に、ドレスを選んでいた。
「緋鷹……先輩?」
 こっちに来いと緋鷹に呼ばれ、素直に従う日那。
 何枚かのドレスを自分の前に当てて、色を決めているらしい。
 知らない間にドレスも決まり、今度は美容室へ。
 日那はただ、席に座っているだけ。
 細かい指示は緋鷹が行っている。

 そして、数時間後。
「日那の全身、ドレスもアクセサリーも、何もかもを俺色にしてみたかったんだよな」
 思わず呟く緋鷹。そんな彼も既にスーツを着ている。
 そこに緋鷹色に染まった日那が恥ずかしそうにやってきた。
「どっどうかな……?」
「すげー似合ってる」
 満足げに笑みを浮かべる緋鷹。
 そして、そのまま日那の手を取り、その甲にキスをした。
「では参りましょうか、俺の姫」
「……うん!」
 頬を赤く染めながら、日那は嬉しそうに頷いた。

 緋鷹にエスコートされ、案内されたのはとある貸切レストラン。
 実はテーブルセッティングから料理のメニュー、ツリーのデザインまで、全て緋鷹が用意したものであった。レストランから見える夜景もまた、素晴らしい。
「うわぁ……!」
 ガラス一面に広がる、美しい夜景は、日那の心をも虜にしたようだ。
 窓の外を眺めている日那。
 そんな彼女の背後に、緋鷹はさりげなく近づき、そっと抱きしめた。
「せ、せんぱ……」
 日那の声が途切れる。
 変わりにあるのは、緋鷹からの口付け。
 重ねられる唇が熱く感じる。
 日那はそっと瞼を閉じた。

 長いようで短いキスが終わると、日那はまた、ゆっくりと目を開けた。
「……あたし、こんな幸せなクリスマスになるなんて思ってなかった……緋鷹先輩、ありがとう、大好き……!」
 その日那の言葉に、緋鷹は嬉しそうにまた、日那を抱きしめるのであった。




イラストレーター名:笹熊田さんご