黒峰・快斗 & 完・全

●初めての二人の愛の結晶?

「雪だるまを作ろう。うん、そうしよう、今から作ろう!」
 外の雪を見て、満面の笑みを作って快斗を見る全。何となく浮かない顔の快斗をひっぱって外へと連れ出す。
 しぶしぶという感じで全に連れ出された快斗だけれども、彼女の無邪気にはしゃぐ姿は素直に可愛いと思っていた。
 可愛いと思うから、雪だるま作りを手伝う。
 楽しげに雪を丸めて大きく大きくしていく全。
 時に無邪気というものはとても恐ろしいものへと変わったりもするもので、全が作ったのは大きな大きな雪玉。
「この雪球ともうひとつ雪球を作って、雪だるまをつくろう!」
「この雪球でつくるって……どんな大きさになるんだよ」
 全が嬉しそうに話すけれども、快斗はあきれ顔。こんな大きなものに合うようにもう1個大きな雪玉を作るとなればどれだけの時間と、労力がいるのだろうとなんて考えてみれば少し途方に暮れてみたりもする。
 が、チラリと全の様子を見てみれば、わくわくとした笑みを顔いっぱいにしている。
 そうなれば仕方がいないなと、小さく困ったような笑みを浮かべて快斗も一緒にもうひとつ巨大な雪玉を作ることにする。

「僕、雪だるま作るんだったら、正義のヒーローの雪だるまにしたい!」
 全のその一言は発せられたとき、ぴたりと快斗の手の動きが止まって全を見た。彼女の言う正義のヒーローはただ一つ。頭にあんこが詰まった憎いやつ。
「ちょっと待て」
 顔も可愛いとは思うし、家事もこなせて、馬鹿なところだって可愛いと思う。だがしかし、彼女の美的センスだけはどうしても認めることができない。ここで彼女に顔を作る全権を与えて、顔を作ってしまったら2本の触覚をもった王様志望になってしまうに違いない。だから快斗は全を止めて、顔を作ろうとしている全の手から小さな雪玉を取り上げる。
「いい、俺がつくる……」
 半ば無理矢理な形で顔の制作権を奪い取り、顔を作っていく快斗。
 顔を作っていく快斗は以外と器用で、しかも几帳面に顔の装飾を施していく。細部にこだわり苦労したところもあるが、できあがった顔はなかなかなものだった。
「凄いぞ! 快斗! 僕の思ったとおりの出来だ!」
 できあがった大きな正義のヒーロー雪だるまを見て、大はしゃぎの全はそのまま快斗に抱きつく。
 抱きつく全の身体を抱き返しながら、苦労の甲斐があったぜと思ったのか思わなかったのか、吐息をはき出した快斗。
 ただ、はしゃぐ全は可愛いと思っていたのは事実。




イラストレーター名:阿佐ヒナ