黒峰・快斗 & 時雨・燎

●何かのパクリ?でも、そんなの関係ねぇ!

 快斗と燎はクリスマス限定の宅配バイトにいそしんでいた。
 宅配便は、ママチャリで。
 気分はまるで、子供の頃に見たアニメ映画に出てきた、赤いリボンが似合う黒いスカートの女の子のよう。

 ママチャリを頑張って運転しているのは快斗だ。まるで、それが当然というように。
「何で俺ばっかり肉体労働……?」
「俺が配ってやってるんだから当然だろ?」
「いや、明らかに8:2ぐらいの割合で俺の方が働いていると思うけど……」
 快斗の愚痴に、素知らぬ顔で答える燎。
 その間も、ママチャリは軽快にクリスマスの街を走り抜けていく。
 やいのやいのと言いながらも、そこは息のあったコンビ同士のコンビネーションなのだろう。荷物はどんどん減っていく。

 でも。
 ここでお約束かのように、トラブルが1つ。
 黒猫のぬいぐるみを落としてしまったのだ。
 でも、そんな事には気がつかず、ママチャリは街を走り抜けていく。
 2人が気付いた時には、もうぬいぐるみをどこで落としたかさえ分からない状態。
 さぁ、困った。

 そこで快斗がなにやら思いつく。
「そういえば、昔そういう話があったよなー」
「まさか……」
 燎も快斗が何を言わんとしているのか分かったらしく、一歩後退。
 もちろんそんなことは断る。断ったつもりなのに断りきれず、燎は猫変身で他の荷物と一緒に、自転車のカゴに詰め込められてしまう。
(「何で僕だけこんな目に……」)
 そんな風に思っているのか、黒猫の瞳が不機嫌そうに光る。
 道は、でこぼこと、どんどん悪くなっていく。
「うにゃーーーーーーっ!!」
「あ! おい! あばれんなー! あぶねーだろー!!」
 その道の悪さに黒猫燎が耐えきれず、狭いカゴの中で暴れ出す。カゴの中で暴れられれば、ハンドルを取られて運転なんかできたものじゃない。
 快斗は叫び、猫も叫ぶ。

 hurry! hurry!
 急げ急げ! 一人と一匹の騒がしいママチャリが、クリスマスの街を行く。




イラストレーター名:姫川 鈍器