●宿り木の下で・・・
はしゃいでヤドリギを探す全を後ろから見つめている快斗。
態度に出しているつもりなのに、全然目の前の彼女には伝わっていないようで、ここはガラではないが『ジンクス』に頼ってみる。
「快斗! 宿り木みつけたぞ! やったな!」
「はしゃぎすぎだぞ、全」
ジンクスのことは知っている全。しかしこのジンクスなら好き合っているもの同士が探すのではないだろうかと、思いながらも宿り木を探す姿はとても楽しそう。
快斗が発した言葉と、ほぼ同時に全が枝に向かって大きく指を指した。
まだイルミネーションされていない木の枝に赤い実。
全は見つけたうれしさで、そのまま振り返って快斗の方を見ようとした。が、それはかなわなかった。
「お前のことが本気で好きなんだ。って……ずっと前からな」
背後からぎゅっと快斗に抱きしめられているから。
それに続く言葉に、心臓が跳ね上がる。
告白を受けていることぐらい、いくら鈍感な自分だって分る。それから何でという言葉が何度も何度も頭の中をぐるぐる駆けめぐる。
何で快斗が自分に告白しているのだろう。
抱きしめられてすぐそこで聞こえる彼の言葉。
そこで気がついた。彼も自分の事が好きだと言うことに。
その事実を確認すると、抱きしめられて赤くなった頬が更に赤くなり、耳までも赤くなっている。
「えっと……これから、よろしくお願いいたします……」
快斗の告白に返す言葉は、どういって返したものか咄嗟に思いつかずに、何だか妙に丁寧で他人行儀ぽい言葉になってしまったけど、今の全にはコレが精一杯。
そんな彼女を後ろから抱きしめたままの快斗は、いつもは見せない真っ赤になって大人しい彼女の姿を珍しくも思うが、それ以上にとても可愛く感じる。
快斗の手が全の肩へと移動すると、そのまま彼女を自分の方に向かせる。それに誘われて少し俯いていた全の顔がゆっくりと上がり、快斗の顔を見上げた。
向かい合った二人の顔がそっと近づき、そのまま唇が重なった。
唇が重なったのは一瞬かそれとも永遠か……。
さほど長い時間ではないけれども、この時間だけは特別ゆっくりと流れているような気がしてならない。
ゆっくりと離れる顔。
恥ずかしくて相手の顔を直視できない。
だからか快斗は全の身体を抱きしめる。
「これからも傍にいてくれな」
「おう……わかったぞ」
快斗の言葉に返すように、顔を真っ赤にしたまま全もまたしっかりと彼の身体を抱き返す。そうして一緒に返す言葉は恥ずかしいけど、なんだかとても嬉しい。
二人の距離がずっと縮まって、いつまでも触れ合いたいと素直に思えた。
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