●聖夜の二人
待ち合わせはクリスマスツリーの前。
その待ち合わせ場所でフィアッセを待っているのはサンタルックの碧。
彼が来るのが今か今かと、自然とそわそわしてしまう。手にぎゅっと握りししめたのは彼へのプレゼントのマフラー。気に入ってくれるかどうかとか、色んな事が今更ながら気になってしまう。
「ごめん、ごめん」
クリスマスツリーの前で碧が待っているのを見つけると、フィアッセがロングコートの裾を翻して駆け寄ってくる。
フィアッセの姿が大きくなるにつれて、心臓がドキドキと高鳴る。
すぐそこまでフィアッセがやってくると、胸に抱えていた包みを彼の方へとずいっと差し出す。
「こ、これ。プレゼントっ! ……その、好きだっ!!」
プレゼントに込めて、改めて自分の想いを告白する碧の顔は照れからか、少し赤い。
いきなりの出来事にフィアッセは差し出されたクリスマスカラーのものと碧を交互に見比べる。
「ありがとう!」
ようやく状況を飲み込めたのか、嬉しそうな笑みを浮かべて差し出されたプレゼントを受け取る。
それは碧のお手製の赤と緑のクリスマスカラーのボーダーのマフラー。マフラーの両端には、フェルトで作ったフィアッセと碧の人形が、端にひとつずつついている。
フィアッセが嬉しそうに貰ったマフラーを首に掛けると、すぐにその両手は碧を捉える。
「愛いヤツ」
そんな言葉よりも早く、フィアッセが碧の身体を抱きしめる。その拍子に碧が被っていたサンタ帽が宙を飛び、地面へと静かに落ちたが抱き合った二人はそんな事に気がつかない。
碧にとっては突然の出来事で、びっくりしたような表情でまじまじとフィアッセを見つめてしまう。
愛しそうに碧を抱きしめるフィアッセ。
それをただ見つめる碧。
そのままフィアッセの胸に顔を埋める。それでもフィアッセは彼女の身体を慈しむように抱きしめて。
彼女が恥ずかしさに離れてしまおうとしても、フィアッセは彼女を離すことがなかった。それがある意味彼女の告白に返す彼の言葉。
冷たい風が吹くけれども、碧の編んだマフラーもあるし、これだけひっついてれば大丈夫。
風に吹かれて揺れるマフラーの端にいるフィアッセと碧も、嬉しそうに笑っているみたいに見えた。
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