●さ、寒いからなのだ
街並はどこもかしこもクリスマス一色。
イルミネーションが輝く街を歩くのはそれだけで楽しい。
綺麗な場所にはここぞとばかりに、沢山のカップルがデートを楽しんでいる。腕を組んだり、手を繋いだり、肩を抱いたり、カップル達は様々な姿で寄り添い合っている。
「むむ………みな一様に腕を組んでいるのだ……なんというか恋人はああやるべきなのか?」
「そうだなぁ、ああされるとやっぱこう……一緒に過ごしてる、って感じがするだろ?」
「むぅ……」
綺麗なイルミネーションと一緒に目に入ってくるのは、そんな沢山のカップル達。
海音が目にするカップル達は皆腕組み、身体を寄り添い合って歩いていく。
今、通り過ぎたカップルもそうだった。だから思わず心太郎に尋ねてみると、普段と同じようなにこやかな笑みで答えが返ってきた。
小さく唸るものの、周りの雰囲気に触発された海音が心太郎と腕を組もうと、自分の腕を伸ばし試みる。
何度となくぎこちなく腕を絡めようとチャレンジするものの、最後の勇気が足りなくてなかなか成功しない。
何度目かのチャレンジの後、ようやく腕を組むことに成功した。
「恋人っぽいかんじだなぁ♪」
しかしそんな海音の心の中を知っているのか、心太郎の少しからかった様な言葉に、海音の顔が真っ赤になる。
「さ、さっきすごい風が吹いてちょっと足元が狂ったのだ。あと寒いからだ!! 風邪をひいてはつまらんからな」
「わかってるさね、もっとくっついたほうがあったかいぞー」
赤い顔を更に赤くして、心太郎に言い返す海音。
それに心太郎はわざとらしく言葉を付け足し、海音が可愛いなと心太郎は微笑み返す。
煌めくイルミネーション。
今日はクリスマス。
少しだけ特別な日だけれども、もしかしたらサプライズがあるかもしれない。
腕を組み過ぎゆくカップル達と同じように、海音と心太郎も腕を組み、身体を寄せ合い煌めく街中を歩いていく。
それは少しぎこちないかもしれないけれども。
くっつくことの温かさよりも、心の中が温かい。
| |