●─二つの鼓動が重なる聖なる夜─
夜のクリスマスパーティーも、もう終わり。
ツリーのある公園を散策した後、弓姫と優斗は手を繋ぎ、イルミネーションに彩られたツリーを眺めていた。
「……弓姫、ちょっと寒くない?」
気が付けば、空からはふわふわと舞う雪が落ちてきていた。
優斗に突然尋ねられ、弓姫はきょとんとするものの。
「ちょっとだけ。でも平気なくらいです、し、きゃぅ!?」
優斗の突然は質問だけではなかった。
そっと弓姫の後ろに回っていた優斗が、後ろから弓姫を抱きしめたのだ。
弓姫はとても驚き、顔を真っ赤にさせている。
ちなみに抱きしめた優斗も頬を染めている。
「……驚いた? ……でも……すごくあったかいでしょ……?」
優斗の声が耳のすぐ横から聞こえる。
弓姫はただ、首で頷きながら意思表示。すぐに言葉にでないのは、それほど驚いているから。
それとも、どきどきしているせい?
抱きつく優斗の耳に、弓姫のかすかな鼓動音が届いた。
「今日は……付き合って初めてのイベントだもんね……なにか……してほしいことある?」
そのままの姿勢で、優斗は尋ねた。
弓姫はそっと、優斗によりかかり。
「……暖かくて、し、幸せ心地なので。あの、は、離さないでください」
囁くような弓姫の小さな声が聞こえる。
「うん……じゃあ絶対に離さない……」
さっきよりも強めに優斗は弓姫を抱きしめた。
嬉しくて嬉しくて。
そして、背中越しに感じる、暖かな温もりがくすぐったくて、嬉しくて。
ずっとこのままでいたい……。
弓姫は優斗の腕に自分の手を添えながら、瞳を閉じる。
「……今日は、有難う、です。えと、大好きです、よ!」
相手に伝わるか伝わらないかの、小さな声は。
「ありがとうはまだ早いよ? ……まだ、弓姫を離したくないから……」
きちんと相手にも伝わっていて。
そして、嬉しい言葉まで一緒に。
きらきらと輝くクリスマスツリー。
その側で二人は寄り添うように抱きしめながら、静かに佇んでいた。
寒いはずの外なのに。
弓姫と優斗の二人は、暖かく感じたのであった。
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