ルルー・イツトリ & ヴィヴィ・テクパトル

●〜 Merry Christmas 〜

 『クリスマス』とは、何なのか。
 二人は外国人だが、キリスト教徒ではない。
 また、都会から離れた場所で育ったため、クリスマスの知識については殆どないといっても過言ではないだろう。
 この国、日本に来て初めてのクリスマス。
 日に日に浮ついていく町並みに、クラスメイト達。それを見ているだけでも、ある意味楽しかった。
 そんなに楽しそうになる『クリスマス』というのは、何なのか?
 折角なので二人は、賑やかな街へと繰り出した。

「なぁヴィー姉ぇ、クリスマスって何なんだ?」
 ルルーは姉であるヴィヴィに尋ねた。
「なんだい、知らないのかなルルー。クリスマスとはね、古来からこのニッポンに伝わる生贄の儀式で、『首済ます』が訛った言葉でだね………」
「あー聞いたあたいが馬鹿だったよ」
 長くなりそうな話をルルーは止めた。すかさず。
「ヴィー姉ぇ、適当な事言うのホント好きだよな」
「むッ、心外だねルルー。そもそもルルーから聞いたのじゃないか」
「まぁそうだけどよ」
 クリスマスの日の当日だというのに、どうやら二人はまだ、クリスマスが何なのか分かっていないようだ。
 でも、賑わう町並みを眺めているだけでも、楽しくなるのは、やはりクリスマスだからか。
「てか、クリスマスったぁ、随分美味しそうなんだな。あっちこっちにケーキや菓子が出てやがるぜ」
 解説しよう。クリスマスには、ケーキがつき物だ。ついでにお菓子はプレゼントに最適。特に靴に入ったお菓子は子供達に大人気だ。
 ついでにいうと、クリスマスにはサンタからのプレゼントも贈られる。
 ……とはいっても、二人にはまだわからない。
 クリスマスやプレゼントよりも街で見かけたスイーツに目が奪われているのは……気のせいだろうか?
「仕方ない子だなぁ、ルルーは」
 そして、目の前に現れたツリーを見上げた。
 大きな木に飾られたイルミネーション。
 その点滅する様は美しく、二人の瞳に映った。
「……所で、何時まで頭に乗っているんだい?」
 思わずヴィヴィが突っ込む。
 なんというか、少し首が疲れてきた様子。
「いいじゃねぇか、気にスンナ♪」
「……今日はルルーがいつも入ってる巣箱を忘れてしまったしなぁ」
 そういう問題なのかわからないが、頭に乗っているルルーのことを、あまり気にしていないようだ。
 二人は少しツリーを堪能した後、美味しそうなお菓子屋に入り、戦利品(ケーキにお菓子)を手に入れて、帰路へと着く。
 ちなみに彼らの見つけたクリスマスの答えは。
「クリスマスって面白い」
 だそうだ。




イラストレーター名:乙玉タカシ