●プレゼントはサンタガール?
雪が降り続く町並みは、もう大分と白くなっていた。
そんな中、楓はサンタ服に身を包み、燈吾にクリスマスプレゼントを渡そうとしていた。
「あ……あの……」
「風邪ですか? 顔が赤いですよ?」
顔を赤らめた楓が小声で燈吾を呼びながら、クリスマスプレゼントを渡そうとするのだが、燈吾は顔を赤い楓を見て勘違い。そのまま彼女の額に自分の額をくっつけた。
「っ!?」
「……楓さん?」
なんの前触れもなしに、燈吾の顔が近づきしかも額がくっついた。それに楓の顔は更に赤くなり、そのまま後ろに倒れてしまいそうになる。
そんな楓を支えた燈吾は、そのまま彼女を抱き上げる。
「……家に運んだほうがよさそうですね。……それとも病院にいきますか?」
「いえ、大丈夫です……」
燈吾に話しかけられるものの、楓は抱き上げられたことによって、スカートの裾がどんどん上がってしまうのが気になって仕方ない。
大丈夫だと答えながら、手を伸ばそうとするが、あと少しで届かない。
「………?? とりあえず、家に帰りましょう。どうやら熱があるようですし」
「え……あの……一人で歩きます。……橙吾さん?」
自分の腕の中でもぞもぞと動く楓に、どうしたのだろうと首を傾げる燈吾。彼女が下着を気にしているだなんて思いもしない。それよりも、彼女が風邪を引いて熱を出したのだと勘違いしたまま、少しでも早く暖かい場所へ連れて行こうとする。
身じろぎする楓の事も、熱で具合が悪いのだろう、位にしか考えていないようだ。
だから、大丈夫だという楓の言葉も、燈吾にはただ無理をしているようにしか聞こえなくて。そのまま彼女を抱いたまま、ずんずんと歩いていく。
降ろして貰えそうにないと分かった楓は、せめて何とかスカートの裾を伸ばそうとするが、でもやっぱり届かなくて。直したくても、直せない。
ただ、周囲の人達が自分達を振り返らないように。気付きませんようにとだけ祈る。
そんな楓の様子に全く気付いていない橙吾は、相も変わらず誤解したまま楓を抱いて、クリスマスの街を歩き続けた。
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