●クリスマスは夜鳴きラーメンの味がする
街の中では、楽しげなクリスマスソングが流れている。
マイケルともずくの二人は、ショッピングを楽しみ、ゲームセンターにカラオケボックスと、いつもの場所を巡って、遊びまくる。
気がつけば、時間はあっという間に過ぎており、辺りも暗くなり始めていた。
「うはあ……こんな夜でも街はきらきらしてるんだっぺよぉ〜」
もずくは嬉しそうに声をあげた。
「そうか?」
「おらの田舎に比べたら、眩しいっぺよぉ」
その声に思わず笑みを浮かべる。
人込みを掻き分け、二人は寂れた路地裏の高架下にやってくる。
ぐぎゅるるる〜。
二人のお腹が同時に鳴り響いた。
「ははは、ちょっと腹減ったな」
そういえば飯がまだだったとマイケルは呟く。
「あはは、そうだっぺな」
とそこに丁度良く、チャルメラの音が鳴り響いた。
屋台だ。
しかも美味しいそうなラーメンの香りがたまらない。
二人は顔を見合わせ、走り出した。
暖簾をくぐると、案の定、いかつい顔の店主がラーメンを作っていた。
「いらっしゃい」
その声に続くように二人はラーメンを注文した。
「オレは醤油ラーメンで」
マイケルの後にもずくも恥ずかしそうに告げる。
「お、大盛りチャーシュー燻たま付き……」
店主は黙って器を取り出した。普通の大きさの器の隣には、きちんと一回りも大きい器が用意されている。
手際よく麺を茹で上げ、具を乗せていき、二人の前にどんと置いた。
「はい、お待ち!」
「うはあ……」
言葉にならない声がマイケルの隣で聞こえた。
ぱちっと小気味いい割り箸の音が響き、ずるずると麺をすする音が聞こえてくる。
熱くて美味しいラーメンに二人のお腹も満足し始める。
「お嬢ちゃん、よく食べるねぇ」
店主の声にもずくは顔を真っ赤にさせ、俯いてしまう。けれど、その箸は止まる事はない。
いち早く食べ終えたのはマイケル。
並み盛な上にもずくが頼んだのは、大盛り。しかもおちょぼ口ではむはむと食べている。
と、もずくは、マイケルが食べ終えたのに気づいた。
自分も早くしなければと思い、急いで食べようとするものの、熱くて、おちょぼ口でなかなか進まないようだ。
「いいよいいよ、ゆっくり食べなよ」
その言葉にもずくはぺこりと頭を下げ、ずるずるとラーメンをすすった。
その後、マイケルはもずくを家の近くまで送り届けると、自分も家へと向かう。
クリスマスらしいことは、何もしなかったけれど。
満天の空を見上げて、マイケルは呟いた。
「来年もいい年になりそうだ」
いつも変わらぬ事が二人にとって、心地よいクリスマスなのかもしれない。
| |