●2007.12.24 告白 〜屋上にて〜
そっと差し出したのは、綺麗に包装された、小さな包み。
玄司はそれを受け取り、静かに中をあけた。
そこにあったのは、美濃焼きのシンプルなマグカップ。
雪祢は知らない。
そのマグカップが、玄司の心を動かしたことに。
玄司もプレゼントを持ってきていた。
マグカップのお返しにと用意したのは、雪祢の誕生花でもあるストックの花束。
ストックの花言葉は『豊かな愛』『見つめる未来』。
いや、そんなことは玄司とって、どうでもいいこと。
雪祢が受け取ってくれればそれでいいのだと。
玄司は知らない。
その花を選び、プレゼントしたことが雪祢にとって、とても嬉しかったことを。
玄司と雪祢は、偶然屋上に来ていた。
「ずっと好きでした!」
すぐ近くで、誰かが告白しているらしい。そんな愛らしい声が二人の耳にも届く。
玄司は落ち着きなく、そわそわと辺りを見回している。
不意に、玄司は雪祢に尋ねた。
「雪祢殿には、その……想い人は、おるのか?」
その問いに雪祢は笑顔で答える。
「ううん、いないわ。そういう人がいたらいいんだけど」
それだけ分かれば十分だった。この胸に秘めた想いはそのまま……。
「どうしてそんなこと聞くの?」
雪祢の言葉に、玄司の心が揺れた。
「わしと、付き合ってもらえぬじゃろうか、と思ってな」
搾り出したようなその玄司の言葉に。
「え……嬉しいけど、いいの?」
玄司は続ける。
「心の底から護りたいと、思った。真に護りたい人間など、そうはおらん」
そう、玄司は告げた。
秘めた想いを込めて、そっと。
雪が降ってきていた。
気づけば、もう夜で薄暗くて。
けれど、二人は笑っていた。
月明かりが祝福するかのように二人を照らしている。
遠くに見える、綺麗な夜景。
果たして、彼らの目に、その夜景は映ったのだろうか?
それとも………。
その答えは、二人の心の中に……。
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