ドリス・シュバイツァー & ルート・ベッセル

●ハッピークリスマス?

 とあるクリスマスパーティー。
 ルートは楽しげに、ばくばくとクリスマスのご馳走を頬張っていた。
「クリスマスなんて、俺には関係ねーけど、メシはうまいよな」
 幸せそうに笑みを零す。だが、それも長くは続かないかもしれない。
 ふと、ルートの手が止まった。
(「……いや待て、何か嫌な予感がすんな。何か忘れてるような……」)
 きょろきょろと辺りを見渡し、ああと思いつく。
「いつも、ロクでもないこと運んでくる奴が、まだきてねーんだ」
 ルートの幼馴染でもあるドリスがこの会場に来ていない。
 ならばとルートは、ある選択をした。
 食事がまだ途中だが背に腹は変えられない。
「不服ではあるが逃げるか。掴まったら最後、逆らったら何されるか分からねぇ!」
 くるりと踵を変えて、さっさと外に出る。
 今ならきっと………。
「って来やがったーーーーーーー!!!!!!」
「まあ、ルート。ここにいらしたのですね。ずっと探していたんですのよ」
 ドリスのとびきりの微笑が、ルートを硬直させた。
 残念だったが、ルートはその場を逃げる事もできず。
「さあ、わたくしの家に参りましょう」
「あ、ああ……」
 ドリスにがっちり掴まってしまったのであった。

 しばらくした後、ルートとドリスは無事にドリスの家へと到着する。
「わたくし、今日のために一週間前から、張り切って準備して参りましたのよ」
 笑顔でドリスが手渡したのは、可愛らしいフリフリのドレスにウィッグとアクセサリー。
「女の服!? 冗談じゃねぇ!」
 いつもボーイッシュな格好をしているルート。ルートも本当は女の子なのだが、こういうフリフリのドレスなどには抵抗があるらしい。この日も何とか着なずに済むよう、試みてはいるものの。
「ルートったら、折角華の乙女時代ですのに、毎日毎日修行修行って……。少しは女の子らしいこともしていいと思いますのよ。 今日のパーティーの料理にしても、全部、わたくしが用意いたしましたし……」
 幸せそうに手を合わせて、ドリスは続ける。
「幼馴染のお願いくらい、聞いてくれたっていいですわよね♪」
 有無を言わせない、その迫力に。
「うっ……わ、わかったよ。着ればいーんだろ? 着れば!!」
「ありがとう、ルート。着付けのお手伝いもしてあげますわ」
「それはいらんっ!!」

 数時間後。可愛いドレスを着た珍しいルートの姿があった。
 可愛い格好で、ドリスの用意したご馳走もとい、食べ損なったクリスマスのご馳走を食べている。
「……このメシ美味いな」
「頑張りましたもの♪」
 聖なる夜。幼馴染の二人は特別なクリスマスを過ごした。
 たまにはこういうのも悪くはないと思いながら……。




イラストレーター名:橘平