●君がいるから暖かい
待ち合わせはイルミネーションが綺麗な広場の噴水前。
少し前から雪が降り出していた。
待ち人を寒そうに待っているのは、ほんのりよそ行きな装いの楓雅。
イルミネーションの中、降りゆく雪は綺麗だけれども、雪が降る分寒さは堪える。
少し遅れて鵠夜が到着すると、寒そうな彼女の姿が見えた。
気づかれないように後ろから忍び寄り、彼女の首にマフラーを巻く。
純白でふわもこなマフラーの突然な感触に、驚いて後ろを振り返る楓雅。
「……え？」
振り返って視界に飛び込んできたのは、微笑み立つ鵠夜の姿。突然の出来事に、照れてしまい思わず顔をうつむけてしまう。鵠夜から見えない楓雅の頬は朱に染まっていた。
俯くと風に揺れる白いふわもこのマフラー。
それに何か気がついた楓雅は顔を上げる。
「鵠夜も寒いでしょう？」
悪戯っ子の様な微笑みを浮かべて顔を上げる楓雅。
彼女の手はふわもこのマフラーを掴み一旦解くと、鵠夜の方に歩み寄り今度は彼も一緒に巻き込んでしまう。
それは彼女なりの精一杯の仕返し、それに彼が気がついているのか居ないかは分らないけれども。
近くなった二人の距離。
そこで楓雅は用意していた、クリスマスプレゼントを鵠夜へと差し出す。
突然のプレゼントに驚いたような表情を見せる鵠夜だけれども、それは一瞬。
にこやかに微笑むと鵠夜の顔が更に楓雅へと近づいた。
それは止まることなく、楓雅の頬へと落とされる優しい口づけ。
「楓雅が一番のプレゼントだよ」
鵠夜が楓雅の耳元で囁くメリークリスマス。
楓雅もがんばったものの、彼の方が一枚上手。
再び楓雅の頬が朱に染まる。
まだ雪は降っているけれども、寒くはない。
大事に想う相手の身体がこんなにも近く、こんなにも互いを感じあえるから。
一緒に過ごせるこの愛しい時間を大事にしたい。だから鵠夜はそっと楓雅の側に寄りそう。
いつもこうやって側で寄り添ってくれる鵠夜が大事なのは楓雅も同じ。
この胸を締め付け、溢れるばかりの想いがただ相手に少しでも伝えようと、二人は互いの顔を見つめ合う。
| |
＆
高槻・鵠夜 
