エリス・スプリングウィンド & フィアッセ・イヴリス

●愛しいあの人と一緒に

 クリスマス・イブの当日。
 フィアッセとエリスの二人はパーティーの買出しに来ていた。
 フィアッセのもう一人の恋人は、家でパーティーの飾り付けをしている。
 その間に二人はパーティーに必要なものを買いに来たのだ。

 辺りはクリスマスのイルミネーションに彩られ、美しい光を放っている。
 道行く人々も、恋人達が多い様子。
「フィアッセさんとお買い物デート〜、嬉しいです〜」
 幸せそうにそう呟くのはエリス。フィアッセの腕につかまりながら、荷物を持っていた。
「ええ、そうね。私も楽しいわよ」
 いつもよりはしゃぐエリスを見て、思わず苦笑を浮かべるフィアッセだったが、彼女に向ける瞳は愛しげに輝いていた。
 つぎつぎに買い物を進めていく二人。
 必要なものも、少しずつ集まってきていた。
「わあ〜フィアッセさ〜ん! 見てください! あの服、とっても格好いいです〜」
 これこれと指し示しながら、服のある方へと駆け出した瞬間。
「きゃっ!!」
 エリスがつまづき、前のめりになって……。
「危ないっ!!」
 そんなエリスの腕を即座に掴んで引き寄せる。
 お陰でかすり傷一つなく事なきを得た。
「大丈夫?」
「は、はい〜」
 フィアッセがそっと、エリスを立たせる。
「フィアッセさん、助けてくださってありがとうございます〜」
 恐縮した様子でエリスはぺこぺこと頭を下げていた。
「怪我がなければ、それでいいわ。でも、足元は気をつけてね」
 やや苦笑を浮かべているのは、エリスを心配してのことだろう。
「はいっ」
 エリスはフィアッセの言葉に元気良く、頷いたのであった。

 ふと、駅に置かれた時計が目に入る。
「あ、あらっ!」
 気づけば約束の時間まであと僅か。
 早く帰らなければ、パーティーまで間に合わなくなってしまう。
 どうやら、少し楽しみ過ぎたようだ。
「じゃあ、早く帰りましょうか。早くしないと碧さんがむくれちゃいそうですからね〜」
 にっこりと微笑んで、エリスが提案する。
「そうね、早く戻りましょうか」
 二人はもう一度、腕を組んで仲良く駅のホームへと向かう。
 もう一人の恋人が待つ家へ。
 帰った後の楽しいパーティーを想像して、思わず二人は幸せそうな笑みを浮かべた。




イラストレーター名:百合塚マモル