鷹峰・零 & 潮美・もずく

●煌めく光のクリスマスプレゼント

 明滅する光と常に明るく消えない光、街は2種類の光とスピーカーなどから漏れ出る音楽に溢れていた。
「鷹峰殿〜! 都会はすごいっぺなあ」
 零にしがみついた格好で身を乗り出すもずくの目に、高層ビルの屋上から見下ろした形となる夜景が映る。クリスマスだけあって商店はおろか普段は葉を落とし寂しく風に揺れるだけの街路樹でさえ、枝に電球という名の実を散りばめて、光の洪水の中を行き交う幸せそうな人々の姿を浮かび上がらせている。

「あははは! しっかり掴まってて下さいね!」
 飛ぶ前から既に大はしゃぎのもずくを落とさぬように、ぎゅっと抱きしめ直しながらも、零は笑顔を浮かべて屋上の縁へと足を進める。
 エアライド、本来なら大怪我では済まないような落下の衝撃を押さえてくれる不思議な力は、もずくへ素敵なプレゼントを贈る力を与えてくれた。この後二人はお先にとに揺れながら、街に舞い降りる雪達と共に降りて行くのだ。もちろん、人目につくわけにはいかない為、ちょうど良い落下地点を探すのにはかなり骨が折れたが。
「行きます!」
 声と共に飛び出せば、足下には視界を遮る物は足場すらなく、ふわりと浮くような浮遊感を感じた後、二人は光の溢れる庭へと降りて行く。
「きらきらがいっぺえあってろまんちっくだべよお」
「この街の皆さんの、幸せの輝きですよ!」
 指をさしながら目を輝かせるもずくへ再び微笑みを返して、零は風を感じながら眼下を眺めた。地が近づくにつれ、輝く光煌く夜の街の見える角度が変わって行く。
「こうしてると恋人さんみてぇだあ」
「こ、恋人ー!?」
 頬を赤らめたままもずくが口にした言葉に目を見張った零が、真っ赤になって慌てた瞬間、固まって植えられた街路樹の先端が二人の視界を遮った。後は刹那の間、地に降り立った二人を囲むのは、人目からの防壁にもなる街路樹達。こっそりここから抜け出したところで、人目を忍んで二人だけの時間を楽しんでいた恋人同士ぐらいにしか見えまい。……そう、恋人同士。
「おら、こんなすげえぷれぜんと貰ったの初めてだあ!」
 そんな状況には気づかずに、もずくは零を強く抱きしめる。
「も、もう一度行きましょうか?」
 降り立つ直前の言葉を思い出して赤面する自分を誤魔化すように声をかければ、未だ抱きついたままだったもずくが空を見上げながら言った。
「鷹峰殿はさんたさんみてえだなあ」
 街路樹の枝をすり抜けて何処からともなくクリスマスソングが漏れてくる。二人に遅れて飛び降りた雪達が見上げる二人の頭上を楽しげに舞っていた。




イラストレーター名:ノブ