●そのありふれた奇跡を、キミと
二人で過ごしたクリスマスイブはとても楽しかった。
その締めくくりに、二人は夜景が綺麗に見下ろせる丘にやってきた。
冬の空気はとても澄んでいて、眼下に広がる夜景はとても綺麗で煌びやか。しかし冬の空気は澄んでいる分、とても冷たかった。
夜景が綺麗に見える丘のベンチに座って、のんびりとその美しい景色を眺めている恭一と燿。でも綺麗だと言い合っている間に、恭一が小さくくしゃみをひとつ。流石に、トレーナー1枚では寒さが堪えてきたのかもしれない。
それなら。
一つのマフラーを二人で使い、体を寄せ合う。
それだけで、心も体も十分に温かくなる。
くっついた結果、温かさと別のものも、こみ上げてくる。
彼とくっつけて嬉しいのだけれども、燿はにちょっと恥ずかしい気持ちもあったりする。そんな気持ちを隠すように、話題を探して話しかける。
「えっと、夜景綺麗ですよねっ」
もう少し話が弾むような話題を選べればいいのだけれど、ドキドキしてコレを言うのが精一杯。
でも、恭一の方もあんまり余裕が無いのは一緒だった。
嬉しいけど恥ずかしい、そんな状況に、恭一だって実際のところ、落ち着いて夜景なんて眺めていられるような状況じゃなかった。もう夜景よりも、すぐ隣の近い距離にいる、燿が気になって気になって仕方ないのだから。
「……本当に、凄い綺麗な夜景だな。」
でも、燿の言葉でようやく、視線を広げる事ができて。意識を夜景に向ける事ができると、その美しさに同意を示す。
この美しさは、今日というシチュエーションがあってのことなのかもしれないな……。
そんな気も、する。
「――今日、この日、クリスマスイブを津島さんと過ごせるのは、凄い幸せだな、って思う」
「私も、今日は一緒に居られて嬉しいし、幸せです」
一人で見ていても、きっとこんなにも綺麗だとは思わなかった。彼女が隣にいてこそ、綺麗と思える景色。だからその思いを素直に言葉にする恭一。
それに燿も嬉しそうに小さく微笑むと、恭一のことを見つめる。
同じ思いの二人。
だから今日は……控えめにだけれど、でもしっかりと、彼女の肩を抱きしめる。
――なんだか、夜景がキラキラ瞬いて、さっきまでよりも、もっと綺麗に見えたような気がした。
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