<狂鬼戦争 侵攻開始!>
栃木県の奥に広がる地図にない街、ニュータウン『もみじヶ丘』。
この街は、恐るべき陰陽都市計画を推し進めんとする者達の本拠であった。
無数のゴースト達で満たされたこの街は、世界結界の力により、もはや電車すらも通わない。
そのもみじヶ丘へと通じる線路の上に、集まった銀誓館学園の能力者達の姿があった。
「敵の動きはありませんね。……そろそろ予定の時刻です」
サーチャーの一員として警戒に当たっていたミリアム・ハートウィック(中学生符術士・b17448)の言葉に応じ、能力者達の前に木製の舵輪が運ばれて来る。
この舵輪こそ、かつて恐るべき幽霊船を動かしていたメガリス『さまよえる舵輪』。
このメガリスが、能力者達が『生命賛歌』を発動するために使用されるのだ。
能力者達は、その意識をさまよえる舵輪へと集中していく。
見えざる力は少しずつ収束し、やがて舵輪を中心に巨大な力の渦を描く。
やがて渦巻く力が限界まで高まると同時、眩い閃光が迸った。
その眩さに能力者達が目を閉じた瞬間、体の内から、偉大なる生命の賛歌が湧き上がる。
銀誓館学園のメガリス破壊効果、『生命賛歌』。
能力者達の命を支える大いなる力は、今まさに顕現したのだ。
「侵攻、開始!」
その一声と共に、能力者達は一斉に駆け出した。
碁盤の目のように整備されたもみじヶ丘の街には、多数の商業施設や住宅地が立ち並ぶ。
だが、そこには人の姿はなく、代わってひしめくのは凄まじい数のゴースト達だ。
これまでに能力者達と幾度もの戦いを繰り広げて来た鬼型の地縛霊をはじめとして幾多のゴースト達がうごめく魔都。
その中には、この計画を企んだ組織の、狂気に陥った能力者達も数多くひそんでいるであろうことを、能力者達は知っている。
市庁舎にいる彼らの首魁を捕らえ、狂気の陰陽都市計画を止めねばならない。
また、この街に挑むのは、銀誓館学園の能力者達だけではない。
能力者達を手助けするため、劉・瞬成とその仲間達、さらには山崎・あゆみをはじめとした従属種ヴァンパイアも力を貸してくれる手筈となっているのだ。
自分達の背負う使命、受ける期待を改めて感じながら、能力者達は最初の目標であるもみじヶ丘3丁目への攻撃を開始するのであった。
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