<リプレイ>

●結社企画巡り 〜グルメストリート編
 皆さんこんにちは、さすらいいのグルメ評論家、藤崎・志穂です。
 今日は、銀誓館学園の学園祭で美味しいと評判のお店を紹介していきたいと思います。
 皆さんも、きっと気に入ると思いますよ。

 という冗談はさておき、学園祭も2日目となり、結社企画の投票結果も続々集計されてきています。
 結社企画の種目は全部で4つ。
 中でもグルメストリートは、食べ盛りの学生達にとっては超重要な激戦区。屋台村や調理室近くの教室を中心に90店以上の模擬店が出店されています。
 これから、この激戦区から選ばれた上位3つのお店を紹介していく事になります。
 人気店の美味しいお料理やお菓子を試食したり、名物店員さんの紹介やお客様の生の声など、張り切ってリポートしていくので、最後まで、おつき合いくださいね!

●第3位。桃太郎印の時代劇喫茶「こぶ茶屋」
 グルメストリート。
 それは、美味しい誘惑に満ち満ちた場所。
 多くの学生は、その誘惑に耐えかねて、10時のお茶と、早めのランチ、お昼御飯と食後のデザート、3時のおやつに早めの夕食など、軽く3食以上の食べ物を口にしてしまうらしい。
 そのグルメストリートを、志穂は投票結果を記したメモ帳を装備して、てくてくと歩いている。
 最初の目標は3位入賞の店らしい。
 と、そこに遠くから威勢の良い呼び込みが聞こえてきた。
「さぁさ、皆さん。
 寄ってらっしゃい、見てらっしゃい! 『桃太郎』って知ってるかい?」
 その呼び込みこそ、グルメストリート第3位に輝く『じだいげっき喫茶「こぶ茶屋」』の名物である。
「急いでいけば、演劇も見れそうですね」
 うきうきとした足取りで、志穂はお店の入り口に向かうのだった。

「ごめんくださーい」
 中に入ると食券販売所がある。買い方を聞いてみると、店員さんが手際よく説明してくれる。どうやら、食券一枚で、食事と飲み物を一つづつ好きな物を購入できるシステムのようだ。
 ということで、志穂はまず瓶ラムネを注文した(どうやら、お祭りに瓶ラムネは欠かせないらしい)。
 ビー玉をポンと抜いて渡されたラムネに少し口をつけてから、志穂は早速リポーターのお仕事を開始した。
「こんにちわ。グルメリポーターの藤崎です。皆さんは、どんな料理を注文したんですか?」
 それに答えてくれたのは、卒業生の紅・雪葉(眇・b18452)だ。
「私ですか? 私はもちろん露西亜おにぎりですよ」
 その声に、あったりまえじゃん。俺もおむすびだよ。といった同意の声が複数聞こえてくる。
「アタリとハズレがあるから、ろしあんなんですよ」
 どうやら、このお店の一番人気は露西亜おにぎりらしい。

 ろしあんという単語に何か不吉なものを感じたが、グルメリポーターたるもの、やはり一番人気の試食は必要不可欠ではないだろうか?
 志穂は、数秒ためらった後、思い切って注文した。
「それじゃ、私も、露西亜おにぎりお願いできますか?」
 そして、席に座ってまっていると、可愛い男の子店員がオレンジ色のおにぎりを持ってやってきた。
「これ、ぶっしー先輩が美味しいっていった奴なんだぜ!」
 と。
 それはそれで不安だなぁと思いながら、志穂も一口食べてみる。
 色にたがわぬオレンジの味が口の中に広がった。
「これは……オレンジジュースで炊いたごはんのおにぎりですね。甘さと酸味がほどよく調和……されてないと思います!」
 志穂は、ごっきゅんとおにぎりを飲み下して、断固としてそう言い切った。
 おそらく、その『ぶっしー先輩』というのは、味覚がどうにかなっているのだろう。
 最近はあまり機会は無いが、たまには手料理など食べさせて、味覚を矯正さえてあげるべきかもしれない。
 などと、志穂がとりとめの無い事を考えていた時、舞台で演劇が始まった。

 川から流れてきた桃のマークのドラム缶を包丁で一刀両断するおじいさん。
 その包丁を真剣白羽取りする桃太郎。
 さすが古武道部の演劇だけあって、殺陣姿は、なかなか様になっている。
 その後も、お客さんも参加しつつ、なんとも楽しく盛況な舞台になったのだった。
 そして終劇後。

「こんにちわ、主役の桃太郎さんですね。実は、このお店が『グルメストリート』の3位に入賞したんですが、一言をいただけますか?」
 その志穂の質問に、桃太郎役の山田・八重(ホシゾラステップ・b18967)は、少しだけ息をきらせてこう答えた。
「時代劇喫茶は、何と言っても時代劇! 一騎打ちの為に稽古したりと色々忙しくて大変だったけど楽しかった! これも皆のおかげだね♪」
 その八重の一言に、観客も出演者も皆、惜しみない拍手をおくったのだった。

 ということで、志穂の、時代劇喫茶「こぶ茶屋」レポート。
「時代劇喫茶「こぶ茶屋」の名物は、やっぱり、演劇の桃太郎ですね。コメディっぽいストーリー運びでしたが、要所要所で力が入る展開はさすが古武道部という内容でした。
 この演劇には、部長さんのメモを元に見事に演劇を仕切った副部長の相澤・悟(業を背負った天然疫病神・b03663)の苦労があったようです。
 喫茶のメニューは、瓶ラムネ(お気に入り)、オレンジジュース、ウーロン茶、緑茶、ヤキソバ、お好み焼きに、名物の露西亜おにぎり、それにデザートで、ぷりん4種(みるく、黒糖、こーひー、かすたーど)とわらび餅、マメ大福、あまみそなどが用意されていました。
 和風な雰囲気のくつろぎの空間に、楽しい笑顔があふれる、時代劇喫茶「こぶ茶屋」、とっても素敵なお店だったです!」

●準優勝、デカ盛り喫茶〜sole〜 に挑戦の巻き
 さて、第3位の時代劇喫茶「こぶ茶屋」を後にした志穂は、校舎の中に戻って、聞き込みを開始した。
「このあたりに、全てのメニューが2倍の量のあるデカ盛りの店があるそうなのですが……」
 ここだけ聞くと、某大食い番組のようだが、これにはきちんとした理由がある。
 そう、準優勝の店は『デカ盛り喫茶〜sole〜』。メニューの豊富さとその量で大人気のお店なのだ。
 さすがに人気店だけあって、情報はすぐに集まった。
「あぁ、勿論知っているぞ。なかなか美味しいペペロチーノを出してくれる店だ」
 文月・裕也(月夜の着ぐるみ探偵・b33412)は、そう答えると店の場所を志穂に教えてくれたのだ。
「ありがとうございます。そうだ、その店に何かお勧めメニューってありますか?」
 志穂がわくわくしながら、そう聞いた。そして、
「そうだな特製ソースと6倍青汁……」
 という裕也の返答を聞くやいなや志穂は素早くお礼を言ってデカ盛り喫茶〜sole〜へと駆け出していった。
 その後ろでは「には気をつけろよ」との裕也の言葉が、空しく宙に消えてしまったようだった。

 そして1分後。
「たのもー!」
 志穂は、元気良く、デカ盛り喫茶〜sole〜に入店していた。
「いらっしゃい、注文はおきまりで?」
 その志穂を、店員の芦原・瑞穂(高校生ヘリオン・b44295)が薄い笑みを浮かべて出迎えてくれた。
 彼女のギャルソン姿はかなり妖艶で、とてもとても志穂より年下には見えなかった……というのは、言わぬが花だろう。

 なお、瑞穂が見せてくれたメニューは本当に多彩だった。
 クリーム系のパスタだけで、カルボナーラ(鳥肉とベーコンのクリームソース)、森のきのこのクリームソース、食べてびっくり!恐怖のキムチ入りクリームソース(夏使用)の3種類。
 ペペロンチーノ系が、心も頭も人との関係もクールダウン! しゃきしゃき野菜の冷やしペペロンチーノ、俺の舌が真っ赤に燃える!早く水を飲めよと届き叫べるペペロンチーノ(食べてみてからのお楽しみ)、高級キャビアと松坂牛のペペロンチーノ、しめじとベーコンのペペロンチーノの4種類、和風醤油系2種類に即席カレーパスタ、ハヤシパスタ、フルーツと生クリームのパスタと全部で、12種類のパスターがあったのだ。
 パスタが苦手な人には、焼鮭の定食なども揃って、全部2倍のボリュームだ。

「今日は、朝ごはんも抜いてきたし、たくさん食べれそうですね。うーん、せっかくだから……高級キャビアと松阪牛のペペロンチーノください、特製ソースで。あと、6倍青汁いただけますか?」
 どうやら志穂は、豪華そうなメニューに目がくらんだようだ。

 で、結局……。
「特製ソースが辛いよー。青汁が苦いよー。お花畑が見えちゃったよー」
 という結果となったようです。

 それでも、なんとか完食した志穂であったが……。
「それひゃあたらへまして、てんひょうはんにおひゃなしを……」
 どうやら辛さで口がまわらなくなったらしい。
 それでも、ごくごく水を飲んで頑張ろうとしたが、
「ごめんなさいでした。それじゃ、あらためまして、ひっく」
 今度は、しゃっくりがとまらなくなってしまった。

「まぁ、そうだな。うちではデカ盛り喫茶〜sole〜として出展させてもらっている。メニューに載っている料理、飲物などが全て2倍増で、最高10倍まで増やせる。三倍以降を頼んだ方は食べ切れなければ罰として青汁を飲んでもらっているのだが、稀に、最初から頼んでくれる人もいるようだ」
 志穂があまりにも役に立たずに可哀想だったので、部長の志倉・翼(魔炎の重戦車・b42787)が助け舟を出してくれたようだ。
 なお、6倍以上を食べきると無料というサービスもあり、かなりの人気だったようだ。
 勿論、料理が美味しくて思わず6倍食べきる人も多かった事は、店長としては嬉しくもあり辛くもありという所だったらしい。

 なお、コメントする翼の後ろでは、夕凪・真名深(月夜の探偵見習い・b33573)が、
「ろっくばーい、ろっくばーい♪ ぱっすたっが、ろっくばーい♪ 残したら青汁ですよぉ〜!! あっおじるどうめい〜♪ あっおじるどうめい〜♪」
 といった、怪しい踊りを踊っていたのは、まぁ、ご愛嬌という事で。

●番外編はクレープのお店
「あぁ、やっと、口のひりひりがおさまりました」
 志穂は、今度は校舎の外の屋台村にやってきていた。
 口がヒリヒリして熱いので、外の空気にあたりにきたらしい。
「このあたりも、なかなか賑やかですね。ちょっと、お腹は一杯ですけど、甘いものとか欲しいですよね。あっ、あの店、かなり繁盛してるみたい。きっと美味しいお店です」
 そう言うと、志穂は、屋台の列に並んだのだった。
 そのお店は『出張屋台Sweet & Snack 』ど、てきぱきした店員さんが、そして美味しいクレープやトルティーヤを作ってくれると評判の店だった。

「あまーい、クレープくださいな」
 志穂は、そう頼むと店長の玖凪・蜜琉(シューティングスター・b02001)が、手際よくクレープを作って渡してくれた。
 志穂のいい加減な注文に、とても美味しいオリジナルクレープで答えてくれたのは、なかなか素晴らしいお店なのだろう。

「あぁ美味しかった」
 志穂は、お礼をいって店を離れると、折角なのでこの店の評判を聞いてみる事にした。

「そうですね、珍しい味ですが中々美味しかったです。中々味わえない変わったスナックが食べられた事は学園祭の利点ですから、素晴らしいと思います」
 錘江田・水歌(叶わぬ願い・b23273)さんの感想。
「クレープを食べに行ったよ。2つ頼んだの。1個はぼくので1個はプレゼント用だったの。お任せにしたんだけど可愛いクレープで、素敵なラッピングまでしてくれてとっても嬉しかったなぁ」
 花乃宮・奈都貴(花冠姫は狼騎士の手を取って・b24270)の感想。
 などなど、評価する声もとても多かったようだ。

 なんとなく入った店だけれど、とても良いお店に巡り合えたらしい。
 志穂は、満足しながら、残された最後の店、最優秀グルメストリートへと歩き出したのだった。

●最優秀グルメストリート。それは、執事の魅力
 執事、それは甘美な響き。
 執事、それはいぶし銀の夢。
 執事、その言葉は魔性の魅力をもって、人々を誘惑することだろう。
 銀誓館学園の学園祭でも、その執事の魅力は遺憾なく発揮されていた。
 複数の執事喫茶があり、執事喫茶でなくても店員が執事の格好をしている店も多数存在していたのだ。
 そう、執事こそは、次の時代を担うオピニオンリーダーになりえる職業なのだ。

「でも、小中学生のなりたい職業ベスト20とかには、執事って入らないんですよね。どうしてんなんでしょう?」
 そんな独りツッコミをつぶやきながら、志穂は遂に、その店の前に来た。
 その店こそ、退魔結社☆封印倶楽部が運営する、執事喫茶「ふーいんくらぶ」。
 最優秀グルメストリートの栄冠に輝いた店なのだ。

「えっと、すみません。お約束なので、ドラムロールお願いできますか?」
 志穂は、ちょうどそのあたりを歩いていた生徒数人にドラムロールをお願いする。
 そして、
「「「「「「ダララララララララ……ダララン!!」」」」 」」
 ノリの良い銀誓館の学生(昨年比1.5倍)が声を合わせて、ドラムロールを合唱する中、志穂は、執事喫茶「ふーいんくらぶ」の扉を大きく開け放った!

「お帰りなさいませ、お嬢様。お茶の準備ができております、こちらへどうぞ」
 扉を開けると葦原・淳(漆黒のやんちゃ猫・b02155)を先頭に執事服の男女が出迎えてくれた。
「あの、えっと。……はい」
 ちょっと、頬を赤らめて素直に席に向かおうとする志穂に、ドラムロールをしてくれたギャラリーが突っ込みを入れる。
「おーい、藤崎。そうじゃないだろー」

 その声に、志穂ははたと正気に戻り、執事の皆さんを振り返った。
「おめでとうございますっ! 執事喫茶「ふーいんくらぶ」が、グルメストリートの最優秀に選ばれました!」
 その瞬間、店の内外で、ひときわ大きな拍手が沸きあがった。

 そして……無印執事の木村・小夜が、ぶかばか笑い執事の草影・茜が、三つ編み執事の橘・鞠絵が、狙撃猫執事の葦原・淳が、剣術執事の布津・祭理が、大食い執事のノゥエム・グラトニーが、イケメンヒーロー執事の磯神・陽一朗が、普通の執事ユリア・ガーランドが、スーパーイケメンタイム執事の高坂・弾正が、クール執事の玖堂・統夜が、不器用執事の九十九守・大河が、ムッツリ執事のシルヴェスト・ヴァディワールが、ポニテ執事の篠崎・七衣、ナンパな執事の黒崎・涼、執事の舞志野・美咲、深凪・諒、相馬・亮介、霜月・秋野他の執事達が、これ以上無く優雅に、そして、美しく一例をして声を揃えた。
「ありがとうございます。旦那様、お嬢様」

 それは、ある意味圧巻であった。
 勿論、この執事達の競演に、志穂も含めてギャラリー達のボルテージも最高潮に達している。
「こんなにたくさんの執事さんに、お嬢様って言われるのって、すごい嬉しいですね」
 と、興奮さめやらぬ志穂は、それでもなんとか正気を取り戻し、団長代理の木村・小夜(内気な眠り姫・b10537)に、優勝の感想を聞くことができた。

「お屋敷に、お帰りになった、旦那様、お嬢様に、紅茶や、お菓子で、おもてなし。団員皆で、がんばりました。執事服なんて、はじめて、着ましたけれど、皆のように、私も、似合っているでしょうか?」

「勿論ですよ! 似合いまくりです!」
 勿論志穂は、すぐさまそう太鼓判を押した。

 その後、志穂は、この素晴らしい執事ワールドを充分に堪能すべくお客さん……、いや違う。
 お嬢様として席についたのだった。

 そして30分後。
「いってらっしゃいませ、お嬢様」
 との言葉に、おくられて、執事喫茶「ふーいんくらぶ」を後にしたのだった。

 執事、それは甘美な響き。
 執事、それはいぶし銀の夢。
 執事、その言葉は魔性の魅力をもって、人々を誘惑することだろう。


「グルメストリートの現場レポートは、これで終了です。
 レポーターは、この私、藤崎・志穂。協力は……、銀誓館学園の学生の皆さんで。
 投票してくれた皆さん、レポートに協力してくれた皆さん、本当にありがとうございました!
 優勝は、執事喫茶「ふーいんくらぶ」。
 準優勝は、デカ盛り喫茶〜sole〜。
 第3位が、時代劇喫茶「こぶ茶屋」。
 という結果になりましたが、この3店以外にもたくさんの名店や楽しいお店がありました。
 全部の料理を食べる事はできませんでしたが、その楽しそうな雰囲気と美味しい匂いだけで、どんぶりめしが食べられそうな気分です。

 私は今年で卒業ですが、来年の学園祭も、今年以上に盛り上げてくださいね!
 それでは、皆さん、ごきげんよーです!」

 結社企画巡り 〜グルメストリート編 終了。