<今治市解放戦 侵攻開始!>
愛媛県今治市。
西瀬戸内自動車道で本州の広島市と結ばれたこの都市は、2005年に行われた周辺市町村との合併によって愛媛県第2の都市に成長した。
この合併によって、点在していた周辺地域の造船・海運業者が集中することとなった今治市は、現在では日本のみならず世界でも有数の海事都市としても知られている。
だが、現在の今治市に、街を活発に行き交う人々の姿も、入港する船の姿も見る事は出来ない。
住民達の代わりに市街を占拠するのは、土蜘蛛の女王、朝比奈・瑞貴の《無限繁栄》によって呼び出された土蜘蛛の一族。そして、『揺籠の君』に従うリリス達だ。
さらには大谷墓苑を拠点とした『天輪宗』によって、無数の妖獣までもが徘徊している。
常識の失われた街の中、今治市に住まう人々は、逃げ出すことすら出来ずにいるのだ。
その恐怖から今治市を、そしてそこに住まう人々を救出せんとする銀誓館学園の能力者達の姿は、今治駅を望む場所にあった。
「時間ですね。作戦を開始しましょう!」
コマンダーの楢芝鳥・俊哉の言葉に、メガリス『ヤヌスの鏡』が能力者達の前へと運ばれて来る。
古代ローマのロムルス=レムス二重王が所持していたという、美しい手鏡。
雪女が銀誓館学園に加わると共にもたらされたこのメガリスが、能力者達が『生命賛歌』を発動するために使用されるのだ。
「皆さんの意識と力を、メガリスに集中して下さい!」
俊哉の声と共に、能力者達は、その意識と力をヤヌスの鏡へと集中していく。
見えざる力は少しずつ収束し、やがて巨大な力の渦を描いた。
やがて渦巻く力が限界まで高まると同時、ヤヌスの鏡は砕け、中からは眩い閃光が迸る。
その温かな輝きに能力者達が身を委ねたその瞬間、体の奥底から、偉大なる生命の賛歌が湧き上がった。
能力者達の命を支えるメガリス破壊効果、『生命賛歌』の力が顕現したのだ。
多くの戦いの中で能力者達を守り、勝利をもたらしてきた生命賛歌が自分達を支えるのを、能力者達は確かに感じ取る。
「戦闘、開始!」
その声と共に、能力者達は今治駅へと向かって走り出した。
今治駅を守る鋏角衆や蜘蛛童は、既にこちらの接近に気付き戦闘態勢に入っている。
敵に回った土蜘蛛勢力がいかに手強い存在であるかは、過去に土蜘蛛戦争を経験した者達は誰しもが理解するところだ。
だが、無数の敵を打ち倒し、能力者達は今治市を必ずや恐怖の中から解放しなくてはならない。
能力者達は、今治駅を守る鋏角衆や蜘蛛童との戦闘を開始するのであった。
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