鎖山・ペコ & 紫水・晶

●*x-Under the Stardust-x*

 時計の針は、夜の7時をまわったところ。
 結社の仲間達とのパーティーも楽しいけれど、やっぱり2人きりの時間も欲しくって、ペコは晶の手を引いて、こっそり聖堂を抜け出した。
 向かった先は教会の裏。
 壁の崩れ落ちたそこから、2人は庭へ忍び込んだ。

 淡いイルミネーションとヤドリギの枝が飾られた木の根元、崩れた壁にふたり並んで腰をかける。
「寒いのにゴメンね?」
「ううん、大丈夫。……あっ、そのランプ……」
 晶はふと、ペコの手の中にある小さなランプへ視線を向けた。
 それは今から1年前に、晶がペコに贈ったもの。
 淡い光が灯されれば、サファイアの飾りが光り輝き、懐かしい記憶が暖かな色とともに浮かんでくる。
「晶さんと、どうしても2人きりになりたかったんだ」
 そう言って、人懐っこい笑顔を見せるペコ。つられるように、晶もふわりと笑みを浮かべる。

 そして……。
「ヤドリギの下の女性にはキスを。それが男の礼儀なんだって」
「えっ?」
 ほんの一瞬の出来事。
 晶の頬にチュッと触れた、ペコの柔らかで温かな唇。
 ヤドリギのせいにしてこんな事するのは、ちょっと卑怯かもしれないけれど。
「ずるいなんて、言わないでね?」
「あっ、え……ペコ君っ……!」
 ペコは笑って誤魔化しながら、そっと晶に寄り添った。
 頬を紅潮させた晶も、しどろもどろになりながら、少し恥ずかしそうに身を寄せる。
 触れ合う右腕と左腕が、何だかいつもより心地良い。

 ふわりと雪が舞い落ちる。
 本当は、一緒に流れ星を探してみたかったけれど、今夜はちょっと無理なよう。
 だから願い事は、また今度。
 またこの人と、一緒に過ごせますように。
 その想いを、ペコはこっそり心の中にしまいこみ、片手で雪をひとひら受けた。

 時計の針はそろそろ8時。
 ふたりの姿がないことに、皆はそろそろ気付いただろうか。
 けれど、もう少しだけ。
 もう少しだけ、ふたりきりの時を過ごそう。

 もう少しだけ、互いの温もりを感じあっていよう………。




イラストレーター名:氷堂瑠依