●ヤドリギに誓えば
黄昏時の夕闇の中。
銀誓館学園の敷地内の一角に、たったひとつの枝に、宿木が飾られた、とある木の下。
そこでふたりは抱き合い、長い口付けを交わしていた。
ふいにイルミネーションが灯って、パアッと辺りを照らし出す。
「……!!」
突然の出来事に驚き、反射的に唇を離すふたり。
「チャンスはこれが点灯するまでだから、ギリギリセーフだったってワケか。ぁ、ぅ、よくよく考えたら、結構長い時間キスしてたのかもな」
慌てた様子で辺りを見回しながら、零司がホッとした様子で溜息を漏らす。
感覚的にはそれほど長くないと思っていたが、実際には随分と時間が経っていたらしい。
「なぁ……、零司」
名残惜しそうな表情を浮かべ、暁が彼の名前を口にした。
「なんだい、暁。……って、呼び捨てはマズイか」
苦笑いを浮かべ、零司が頬を掻く。
「いや、呼び捨て嬉しいな……。ずっと名字に先輩だったから。3度目のクリスマス。でも恋人では初めてで……、今日は楽しかったよ」
ゆっくりと首を横に振り、暁が零司に微笑みかけた。
「……ホント、今日一日楽しかったよな。暁先輩と出会ってから、色んな事があったけど、俺をこんな気持ちにさせてくれるのは、先輩だけだから」
彼女と言葉を交わす中、段々と抱き締める力が強くなる。
「だから先輩はナシ」
暁が言葉を挟む
恋人同士なのだから、先輩と呼ぶ必要は無い。
「暁を、大切にするって誓うよ。だから、その、良かったら、ずっと俺と一緒にいてくれないか……?」
もう一度、誓いの言葉と共に、口付けを交わす。
お互いの気持ちを確かめ合うようにして、濃厚なキスを……。
彼女は何も答えなかったが、背中に感じる腕の強さと、わずかに滲む嬉しさが、その返事……。
まるで彼らを祝福するようにして、イルミネーションの辺りが照らす。
そんなふたりを白い実を宿した宿木が優しく見守っていた。
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