●クリスマス・プレゼント 〜銀月の下で〜
自分達が所属している結社結社−Friend−の森の中。
パーティを終えた夜の帰り道。
ふたりは鬱蒼と生い茂る森の中を歩いていた。
「パーティ……、楽しかったね?」
先ほど渡しそびれたプレゼントを、いつ渡すべきか悩みつつ、来夢が零路に話しかける。
「……知らなかった、クリスマスってこういうものなんだね……」
奴隷だった頃を思い出し、零路が真っ白な息を吐く。
「クリスマスパーティー……、した事ないの?」
驚いた様子で零路を見つめ、来夢が確かめるようにして問いかけた。
その問いに静かに頷く、零路。
そこで餌付けをしている兎が、茂みの中からぴょこんと顔を出す。
「今日はあげられる物はないぞ。お前、鶏肉は食べないだろう?」
兎と目線を合わせ、零路がボソリと呟いた。
「でも、付け合わせの葉っぱは……大丈夫だよね?」
来夢の言葉に、零路が黙って首を横に振る。
「止めておいた方がいいんじゃないのかな。普段、食べているものとは違うから、調子が悪くなっても困るしね」
その言葉を聞いて兎が残念そうな雰囲気を漂わせていたが、何故かその場からまったく動こうとはしなかった。
「なんだ、構って欲しいのかな?」
不思議そうに首を傾げ、来夢が兎に近づいていく。
兎もそれに応えるようにして、ピョンピョンと飛び跳ね、来夢の足元までやってきた。
「ねぇ……、ちょっと、遊んでもいい?」
その場にしゃがみ、来夢が兎と戯れる。
そんな彼女を見守りながら、零路がラッピングされた袋を出した。
「ひょっとして、兎の方が良かったかな?」
苦笑いを浮かべながら、零路がぽつりと口にする。
「ん? なにか、言った?」
零路の言葉で我に返り、来夢が素早く顔を上げた。
「いや、前にペンギンが好きって言ってたよね? ……だから、これ……。……気に入ってくれると……、嬉しい」
咄嗟に後ろ手に隠した袋を渡す。
「ありがとうっ! それじゃ、お返しにこれ。……初めての手編みだったから、うまく行かなかったけど……」
包みの中に入っていたペンギンのぬいぐるみを抱きしめ、来夢が零路にも渡しそびれたプレゼントを渡す。
それは妙に長すぎてしまったマフラー。
「それじゃ、ふたりで巻こうか?」
恥ずかしそうに頬を染め、零路が一本のマフラーをふたりで巻く。
そして、ふたりは幸せな気持ちに包まれながら、仲良く帰路につくのであった。
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