●戦場でMerry X'mas―少しだけ変わった俺ら
「……おいおい。朝っぱらから、なにやってんだ俺達は……?」
籠幻が不満げに愚痴をこぼす。
日が昇りかけ始めた早朝……。
後ろから集団に追われて、ハイウェイを走るふたり。
少し雪の積もったぼろぼろのハイウェイ。
籠幻達を挑発するようにして、後ろの集団が徐々にスピードをあげている。
「つーか、俺の方が聞きたいぞ……マジで……」
納得の行かない表情を浮かべ、ガルズが後ろの集団を睨む。
一体、どうしてこうなってしまったのか理由が分からない。
特にこちら側から喧嘩を吹っかけたわけでもないのに、後ろに集団が勝手にテンションをあげて追いかけてきただけだ。
何か相手を怒らすような事をしたかも知れないと思い、改めて考え直してみたが、まったくと言っていいほど心当たりが無い。
そうしているうちに、前からも集団が現れた。
(「……挟み撃ちってわけか」)
籠幻がチィッと舌打ちする。
この後、ガルズはデート。
こんな場所で無駄な時間を費やしているほど、ガルズには余裕が無い。
「……ったく、仕方ない。後ろのお客さんは、俺がどうにかしてやるか」
後ろの集団に視線を送り、籠幻が含みのある笑みを浮かべる。
後ろの集団は口汚い言葉を吐いてきたが、そんな事にいちいち対応しているほど、籠幻も暇ではなかった。
「お前……ったく。わりぃ、任せたぞ!」
籠幻に対して感謝の言葉を送りながら、ガルズが交差するようにして、手に持った炭酸飲料のビンをビンを打ち付け合う。
途端にビンの口部分が勢いよく割れ、ふたりがニヤリと笑って集団に勝負を挑んでいく。
「邪魔だ、どけ!」
雄叫びをあげて一気に突き進み、ガルズが前にいる集団を次々と蹴散らす。
いちいち相手にしている暇は無いが、向かってくるのなら仕方が無い。
「……んじゃ、ちょっとこの独り者に付き合ってもらいますかッ!!」
後ろにいる集団の行く手を阻み、籠幻が口の割れたビンを握り締める。
ガルズのためにも、後ろにいる集団を先にいかせるわけには行かない。
| |