●光明、大好き♪
次第に夜も更けていき、人が少なくなったパーティ会場。
先程までカップルで賑わっていたのが、嘘ではないかと思えるほど、辺りはシーンと静まり返っている。
沙紀と光明のふたりは、窓際のテーブル席に座り、寄り添うようにして身体を密着させた。
しばらくして光明が眠りの世界に誘われ、スヤスヤと寝息を立て始める。
「光明、大好きよ……」
彼の横顔を見て無性に愛しくなり、沙紀が吸い込まれるようにして、彼の頬にそっとキスをする。
「……ん」
その途端に光明が小さく声を漏らす。
そして、ゆっくりと目を開け、ハッとした表情を浮かべる。
「……!」
あまりの顔の近さに、光明が胸をドキドキさせる。
一瞬、何が起こったのか分からなかったが、頬にわずかな感触が残っていたため、彼女からキスをされたのだと、何となく理解する事が出来た。
「もう、遅くなっちゃったわ。一緒に帰らない?」
優しく光明に微笑みかけ、沙紀が彼の手を引き、パーティ会場の外に連れて行く。
光明も彼女に言われるがまま、ふらふらとパーティ会場を後にした。
その途中で沙紀がぴたりと立ち止まり、彼にプレゼントした手編みのマフラーをふたりで仲良く首に回して、再びイルミネーションに彩られた夜の街を歩いていく。
「今日は楽しかったわ。今日がずっと終わらなければいいのにね」
別れ際、沙紀が光明にお礼を言った。
「うん、僕も楽しかったよ」
そう言って光明が笑顔で答える。
それは嘘偽りの無い言葉。
途端に、ここで彼女と別れるのが辛くなった。
その思いを断ち切るようにして、光明が彼女とは別の方向にゆっくりと歩き出す。
「光明!」
彼を呼び止めて駆け寄り、沙紀が不意にキスをした。
「じゃ、またね〜♪」
何事のなかった様子で笑みを浮かべ、沙紀が光明に別れを告げる。
そのため、光明がきょとんとした表情を浮かべ、自分の唇に残った感触を指で確かめた。
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