柾上・霧也 & 四月一日・蒼星

●続・二人のクリスマス

 ───雪は、いつまでたっても止まなかった。
 頬に触れた結晶が、緩やかに熱を吸い込んでゆく。

 そろそろ、部屋の中へ入りましょう。
 霧也は蒼星を促して、暖かな部屋の中へと移動した。
「まずは、髪を拭かないといけませんね」
「わ、っ……」
 照れくささとと違和感で、やや硬くなっていた蒼星に、フワリと被せられた柔らかなタオル。
「折角の冬休み前に、風邪ひいてはいけませんからね」
 焦茶色の髪を濡らす雫を優しく拭いとりながら、霧也は彼女を炬燵の前へといざなった。
「……おや?」
 炬燵に冷えた足を差し入れると、そこには可愛い先客が。
 邪魔にならないようにと気遣いながら、ふたりでクリスマスケーキを食べて、他愛のない言葉を交わす。もっとも蒼星はといえば、緊張の所為か何を話しているのか今ひとつ分かっていないようなのだが。
「メリークリスマス、蒼星さん」
「あっ、霧也はんもメリークリスマス……」
 大好きな人と共にある。
 それは、何より幸せな時間。

 炬燵と猫と、心の温もりに包まれていると、時が経つのも忘れてしまう。
「……あっ」
 ふと会話の止まったその時に、蒼星は、何か感じたかのように襖をほんの少し開けてみた。
 そこにあったのは、夜空の下でもなお眩い、真っ新な銀世界。
「……きれぇ…やな……」
 幻想的な美しさに目を奪われ、暫し見つめていた蒼星だが、我慢できなくなったのか、遂に裸足のまま庭へと飛び出してしまった。
「雪は止みましたか……。でも、あんまり外にいると風邪を引きますよ」
 そう優しく言いながら、霧也も黒猫とともに縁側へと移動して、無邪気にはしゃぐ彼女を見つめる。
 シャク、シャク。
 蒼星が白い息を吐く度に、雪の上に可愛らしい足跡が増えてゆく。
 そして、ぽふっと人型も。
「おやおや……」
 霧也は庭へ降り立つと、蒼星を緩やかに抱きとめて、部屋の中へと連れ戻した。

 冷えきった蒼星の両手を包む、温かな霧也の両手。
 さて、もういちど炬燵に入って、やさしい時間を過ごしましょうか。




イラストレーター名:175