●サンタ捕獲大作戦…失敗
今日はクリスマス。そして二人にとっては決戦の日だ。
部屋には、靴下を餌に数々の罠を設置。大きな虫捕り網も、いつでも振り回せるように手元に置いてある。計画の準備は完全に整っていた。作戦名は『サンタクロースを捕獲して、今までのお礼を言おう大作戦』。外国のサンタ情報もきちんと仕入れ、牛乳とクッキーもちゃんと用意してある。あとは、ゲームをしながら待つだけ。お母さんは留守だから、ずっと遊んでいても怒られない。
「今日こそ、サンタクロース捕まえようぜ!」
作戦は完璧だと叫ぶ友輝に真面目な顔でエリザヴェータも頷く。
「うん、頑張って起きている………」
「よし、サンタが来るまでこれで、対戦だっ!」
「友輝……ずるい」
「何言ってんだよ、油断しているから壁際に追いこまれるんだよ」
エリザヴェータのキャラをKOして得意げに胸を張ると、友輝は次の対戦を始める。
「……」
何かを思い付いたのか、エリザヴェータはぴとっと友輝にくっつく。
「な、なんだよ」
驚いて画面から目を離す友輝に、淡々と宣言する。
「勝ったぞ」
「あ、ずるい!」
「……油断しているからだ」
してやったりと笑うエリザヴェータは可愛いと思うが、やっぱり悔しい。次の対戦を始めた友輝は、一気に必殺技を決める。
「そのキャラ強すぎる……」
「そりゃ、ずっと使ってるからな」
抗議するエリザヴェータを気にせず、友輝は次を始める。
「……はい、ケーキ、あーん」
「い、いきなりなんだよ」
予想外の行動に、友輝はコントローラーを落とした。驚いた彼の口に、少し強引にケーキを入れるとエリザヴェータは満足そうに頷く。
「勝った……」
「あー、ずりいぞ」
怒る友輝に、それもそうかとエリザヴェータは頷く。
「……友輝もするといい」
そう言ってフォークを渡すと、どうぞと口を開けた。友輝の顔が爆発するように赤くなる。目を閉じて小さく口を開けるエリザヴェータは、いつにもまして可愛くて……。
「いや、ちがくて」
友輝は、しどろもどろになるばかり。
そうして二時間後……。
いつしか、どちらからともなく互いの肩に寄り添いながら、深い眠りに落ちてしまった二人。
そんな彼らを、扉の向こうから見つめる人影が――。
「――あっ!」
翌朝、目を覚ました二人の体には、ちゃんと毛布が掛けられていた。
起き上がって見れば、ツリーの下にはプレゼント。
「……無くなってる!」
慌てて見た机の上のクッキーと牛乳は無くなっていて『ありがとう by サンタ』と書かれたクリスマスカードだけが残されていた。
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