ツカサ・カミナギ & ノゥエム・グラトニー

●クリームのように甘い一時

 室内のあちこちに淡い光。普段の教室もこの日はいつもと様変わりしていた。窓の外に見える木々もツリーのようにクリスマス仕様。飾られた教室のあちこちにシーツの掛かったテーブルが置かれ料理やお菓子が並んでいる。
「ツカサさんとデートでシュークリームがおいしいですわ〜♪」
 並ぶテーブルのうち一つに微笑むノゥエムとパートナーの姿に苦笑するツカサの姿があった。
「そうか、おいしいといってもらえるなら作った甲斐があったな」
 二人の前に詰まれたシュークリームはどうやらツカサ作であるらしい。ツリーのように山積みされたシュークリームの塔が所々欠け、二人の手には食べかけのシュークリーム。口に含めばさくっとした生地の中から甘いクリームが口いっぱいに広がって至福の時を与えてくれる。少なくともノゥエムにはそうだった。まさに至福の笑みとも言うべき笑顔がそれを証明している。
(「あら、ツカサさんの口元にもクリームがついてますわ〜♪」)
 甘いシュークリームを食べ終えふとノゥエムが横を見れば、やはりシュークリームを食べ終えたツカサの口には白いホイップクリームが付着していた。
(「そうですわ〜舐めとって差し上げますわ〜♪ そうすればクリームもったいなくないですわね〜、きっと♪」)
 思い付いた名案に心の中で手を打ち、アイデアを速実行に移すべくノゥエムはツカサへと声をかけた。
「ん?」
 声をかけられ顔を上げたツカサの胸にノゥエムの手が置かれる。胸に重みを感じたと思った頃には顔が目の前にあった。
「ツカサさん、口元にクリームがついてましたわよ〜。ん、クリームおいしくていっせきにちょうですわ〜♪」
 暖かな舌の感触が口元を撫で、微かな驚きを残した表情のツカサへと朗らかな笑みを浮かべてノゥエムは言う。ここはクリスマスパーティーの会場。周囲にはパーティーの参加者も居るはずなのだが、人目も気にならないのか、気にするつもりが無いのか。
「それもそうだな……ではお返しに」
 苦笑しつつツカサは返礼にとキスを返す。どうやら後者だったのかも知れない。キスの拍子にギシッと椅子が鳴るがやはり人目同様二人に気にした様子もなく。二人は二人だけのクリスマスを楽しむ。いくら周りに人が居ようとも、これは二人のクリスマス。二人のクリスマスなのだから。




イラストレーター名:咲夜みう