●『私の前は走らせーん!』『おまー!?』
深々と雪の降るクリスマスの夜、サンタさんが来るのを子供はわくわくして期待して待ち疲れて眠り始める時間。夜空に叫び声がこだまする。
「プレゼントは着払い、だー!」
「おま! サイテーなサンタじゃねぇか!!」
ご近所迷惑もいいところなサンタさんとトナカイさんのコンビは、ハイテンションで静かな……いや、静かだった夜に参上していた。
ピエロのような赤鼻をつけた、おそらく美少女なトナカイさんと、猛スピードでソリごと引きずられて真っ白な顔になったサンタさんは、夜道を猛スピードで突き進んで行く。
とある家の前で止まると、サンタさんは袋を担ぎ上げ、赤鼻のトナカイさんに背を向けるが……嫌な予感がして物凄い速さで振り返る。
「って何してんだ!」
「ちっ。バレたか」
トナカイさんの手には、一番高価なプレゼント。
それは今まさに、着ぐるみの隠しポケットに仕舞われようとしていた。
「おまー!? 速攻でいいのえらんでんじゃねー!」
サンタがプレゼントを取り上げれば、しれっとした顔でトナカイは肩をすくめる。
「やーもー、寒空の下で走るなんて、いいもの貰わないとやってられませんわ実際」
そのオーバーリアクションはムカつくこと、この上なし。
「こんの……!」
震えるサンタさんを鼻で笑うトナカイ。思わず身を乗り出したサンタの背中を、トナカイは躊躇なく突き飛ばした。
サンタはバランスを崩してソリの外に落ち、その姿にトナカイは高笑い。
「トナカイの言うこと聞かないサンタなんてこうだ。ふはははははは」
言うが早いが、トナカイはソリを引いて急発進。慌てたのは地面に転がったままのサンタだ。
「おまーっ! 置いてくな! というかプレゼント全部持ち逃げするんじゃねぇ!」
慌てて追いかけるサンタ。もちろんトナカイは止まらない。彼らの進む先には……。
「あ」
行き止まり。
突き当たりにそびえる壁だった。
ごっつん。
「きゅう……」
激突し、目を回すトナカイ。慌てて止まろうとしたサンタも勢いそのままにソリへ衝突。やっぱり頭を打って目の前が真っ白。
後に残るは、深夜の静寂だけ……。
こうして街には静かな聖夜が戻ったのであった。
グダグダはっぴーめりーくりすます。めでたし、めでたし……?
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