●初めてづくしのクリスマス
付き合い始めたばかりで初々しいレンリーと陸は、お互いドキドキしつつもデートを楽しんでいた。
日が暮れて、イルミネーションが次々と点灯していく。その灯りに照らされたレンリーはいつも以上に可愛くて、嬉しいんだけどドキドキが増して……陸は心臓の音がレンリーに聞こえないか心配になりながらも、彼女と並んでクリスマスツリーを見上げた。
内心ではテンパリつつも、何か話題をと考える陸。にこにこと笑顔のレンリーは、陸の顔を見上げると、他に人がいない時を見計らって鞄から小さな包みを取り出す。
「ねぇ、これ……」
ちょっと恥ずかしそうな顔で、可愛く包装されたクリスマスプレゼントを差し出すレンリー。
「開けてみて」
中から現れたのはマフラー。かけたげるー、とマフラーを手にし、レンリーは陸の首にかけていく。
やっぱり陸ちゃん背が高いな。そうレンリーは背伸びしながら、マフラーを掴んだ両手を陸ごと引き寄せる。驚いたように目を見開く陸に、レンリーは『ちゅ』とキスをした。
「メリークリスマス☆ 陸ちゃん♪」
ほんのりと頬を赤く染めながら、いつものように花のような笑顔で、レンリーはそっと囁く。
「めっ、めりー……くりすます……」
いきなりの恋人の行動に照れて、見られていないかと焦りつつも、何とかそう言葉を返す陸。淡く香る香水と、レンリーの匂いが鼻に残る。間近で見たレンリーは、いつもと違う美しさがあって、触れた唇の感覚はしばらく忘れれそうにもない。
まぶしげに恋人を見ていた陸だが、思い出したように紙袋を引っ張り出す。
「そうだ! 俺もプレゼントあんだ。これ……」
「え!? ね、ね、開けてもいい?!」
嬉しそうな恋人の様子に、照れ臭そうに「いいぜ」と陸は呟いた。中身は可愛い帽子だ。耳あてか迷ったんだけどな、と陸は頬をかく。
「ありがと〜♪ 嬉しいな♪ さっそく……」
かぶろうとしたレンリーは、ちょっと悩むように首を傾げる。
「このままでもいけるけど、髪下ろした方が被りやすいよね☆」
そう言ってトレードマークのツインテールを解く。少しくせのあるやわらかな金の髪が、ふんわりと波を描いて広がる。猫毛を両手で落ち着かせると、まるで別人のように見える程だ。
「どうかな?」
帽子をかぶると、レンリーはくるりと回ってみせる。細い髪が風に舞うその姿は、あまりにも美しい。
(「おろした姿見てみたくて贈ったんだけど、大成功!」)
すっげ可愛いし美人だ、と呟くその裏側で、こっそり思う陸だった。
| |