日下部・真昼 & 静島・茅

●しあわせにもつもち

 クリスマスと言う事もあってか、普段はこたつでダラダラとしている茅が、珍しく荷物持ちを買って出てくれたのだから……。
 真昼にはそれがとても嬉しかったのだが、商店街についてから、荷物持ちの見返りとして、執拗にクリスマスケーキを要求されて、茅に下心があった事を理解した。
「なぁ、贅沢は言わない。丸くてサンタが乗っているケーキを食おう」
 それが茅からの要求。
 確かにクリスマスケーキとしては、妥当なサイズと値段。
 だが、しかし……。
「いくらねだっても駄目ですよ。うちには三人しかいないので、ホールのケーキなんて不要です。人数分のショートケーキで十分です」
 真昼がキッパリと言い返す。
 主夫として、当然の答え。
「ショートケーキで十分って。君はクリスマスを何だと思ってるんだ」
 だが、茅も納得していない。
 すぐさま真昼に食って掛かる。
「ケーキを食べる日ではありませんよ」
 と真昼が返せば、
「ケーキを食べる日だろう?」
 と茅が抗議する。
「……違います。見返りを要求されるような荷物持ちはお断り。そんなに非力ではありません」
 そこで真昼がばっさり切り捨て、散歩状態の茅とテクテク歩く。
 気のせいか、背後から突き刺すような視線と、呪いの言葉が聞こえているが、単なる気のせいだと、自分に言い聞かせ、あらかたの買い物を終える。
「それじゃ、残念賞をもらって帰りますよ」
 手元には商店街で貰った福引券が3枚。
「夢がないね」
 茅がぽつりと呟いた。
「福引なんてそうそう当たるもんじゃありませんからね」
 まずは1回目……、はずれの白い玉。
 ……2回目も同じ色。
「ねっ、言ったでしょ。そうそう当たるものでは……」
 最後にからんと音を立てて転がった玉は……、緑。
『おめでとうございます♪ 三等はダンベルセット(20キロ)です』
 カランコロンと軽快にベルが鳴る。
「えっ……」
 そこで言葉を失う真昼。
「確か……、荷物持ちは断ったよね。それじゃ、頑張って」
 それとは対照的に、茅が隣でニヤニヤとした表情を浮かべる。
 ……苦渋の決断だった。
 だが、ここで判断を間違えば、この先ツライ結果が待っている。
 それから、数分後。
 ダンベルとケーキの箱を持って意気揚々と歩く茅の後ろを、真昼が無言でトボトボと歩いていた。




イラストレーター名:江坂