●伝えたい…気持ち
友人宅でのクリスマスパーティーに参加していた葵とヴォルフ。
しかしパーティーの途中、お菓子やジュース類が足りなくなって、ふたりは近くのコンビニまで買いに出かけた。
ジュースにチョコ、ポテトチップス、お煎餅も買って、コンビニを後にする。
冬の夜は冷える。
友人の家は近いけれども、寒さを好むわけではないから、早くパーティー会場に戻ろうと、ヴォルフは自然と早足になる。
その後を葵が追いかけた。
重いジュース類を持って歩くヴォルフの背を見ながら、葵はその後ろをついていく。
そのまま何もなく、いつもと変わらず、友人の家に到着するはずだった。
この公園を横切ってしまえば、もう友人の家に到着する。
その時だった。
「なぁ、ヴォルフ」
「何?」
後ろから葵が彼に声を掛けた。
呼び止められて、ヴォルフは何かあったのだろうかと振り返った。
振り返ったヴォルフの顔を見て、胸の鼓動が一気に高鳴る。
決めていたのに、言うのをやめてしまおうかと躊躇ってしまう。
もっといい言葉があったかもしれない。けれど今の葵にはこれが精一杯。振り絞った勇気。
「あ、あの。……好きなの」
その言葉に、ヴォルフの瞳が瞬いた。
突然の出来事。友人だと思っていた相手からの告白に、一瞬、何を言われたのかわからなかった。
ただ驚いて、呆然として、何か言葉を返さなければならないのだろうが、適当な言葉なんて思い浮かばず、ヴォルフはただきょとんとしたまま、葵を見ていた。
葵は、何か言葉が返ってくるのではないかと、待っていた。
それは自分が待っているものなのか、それとも……。
「できたら……恋人としてみてほしい……の……」
けれど、ヴォルフは自分を見つめたまま。言葉が返ってくることはない。それに切なくなって、葵が続けた。切羽詰ったような言葉は、少し上ずってしまったけど、そんなことに構っていられない。ただ必死だった。
「……しばらく考えさせて欲しい」
否定でも、肯定でもない言葉。
保留になった、葵の気持ち。
その後、ヴォルフは何も言わずに再び歩き出すから、葵もそれに続いて彼の背を追う。
さっきまでと同じ光景なのに、さっきまでと何かが違う。
複雑な思いをそれぞれに抱いたまま、友人の家へと歩き出す。
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