天照・澪 & 滝瀬・知季

●XMas in stopped Ferris wheel

 とある街中で、偶然に出会った、ふたり。
 澪は先程クリスマス抽選会で当たり、チケットを手に入れていたが、『ひとりだと恥ずかしい』と言う理由から、滝瀬も一緒についていく事になった。
 しかし、それは彼にとって、試練の始まり。
 本来、選ぶべきではなかった選択肢。
 彼女に案内されて、連れて行かれたのは、観覧車。
「……えっ?」
 そう思った時には、手遅れだった。
 澪に手を引かれて、ふたりは観覧車へ。
 後戻りできない状況に、平静を装いながら焦る滝瀬。
「俺、此処に乗るの初めてなんだ!」
 澪が嬉しそうな表情を浮かべる。
 ここでパニックに陥ったところで、観覧車から出る事は出来ないので、『これは夢だ』と言い聞かせるようにして時間が過ぎるまでジッと待つ。
「一番上まで来た……あれ……?」
 突然、観覧車が止まり、電気が消える。
(「ど、どうして、こんな場所で……」)
 そこで、すかさずアナウンス。
『電機器の故障により、観覧車は一時停止しております。お客様のご迷惑になり申し訳ありません。しばらく、そのままでお待ちください』
 ……心臓がドキドキする。
 焦る、滝瀬。
「大丈夫?」
 心配した表情を浮かべ、澪が滝瀬の顔を覗き込む。
 だが、女の子の前で、弱いところは見せられない。
「大丈夫だよ、いざとなったらはしご車とかが助けに来てくれるよ。もしかしたらヘリコプターかもしれないし」
 澪が優しい言葉をかける。
「はしご車、へりこぷたー!?」
 余計に慌てる、滝瀬。
 ネガティヴな考えが止まらない。
「心配しなくても、まだ2人だよ。1人よりは心強いよ」
 そのため、澪がポジティヴな考えを口にする。
「そ、そうですよね……」
 女の子にそう言われ、滝瀬が冷静になろうとした。
(「ここでネガティヴな考えばかりしていたら、きっと観覧車が落ちる……」)
 そう考えただけで、目の前が真っ暗……。
(「と、とにかく冷静にならないと……」)
 何とか自分自身に言い聞かせる。
 しかし、観覧車が動き出したのは、それから1時間40分後。
 そのせいで、寒さと空腹に襲われたクリスマスになる事を、ふたりはまだ知らない。




イラストレーター名:柴崎晴