●ふたりのクリスマス〜サクヤ様の下で〜
結社『大神の棲み処』での仲間とのパーティー。
クリスマスプレゼントを渡そうと思い、ふと辺りを見回した時に初めて、ジンクがいなかった事に気づく。
「ジンク〜」
心配した表情を浮かべ、裁がジンクを捜しにむかう。
ジンクの名前を呼びながら、奥へ、奥へ……。
そうしているうちに裁はフラフラと、結社の中心にそびえ立つ大樹の前に辿り着く。
その大樹はワラビのように先端が丸まった形状で、神様が宿ると云われており、サクヤ様と親しまれている。
いまはクリスマスツリーのような飾りつけが施され、ライトアップがされているその大樹の下に、ジンクがひとりで佇んでいた。
「あー、いたいた。もう、なんで急にいなくなるかな? ジンククン」
満面の笑みを浮かべながら、裁がジンクの傍まで駆け寄っていく。
「いつもの放浪癖かな。みんなといるのも楽しいけど、ふっと、一人になりたくなる時があるんだ」
ゆっくりと大木を眺めながら、ジンクがボソリと呟いた。
「でも、なんとなく、栽が追っかけて来てくれるような気はしてた」
そう言ってジンクが振り返り、裁を見つめて笑顔を浮かべる。
(「ふぇ!? なんでボク、ドキドキしてるんだろう?」)
その笑顔を見て、裁が胸を高鳴らせた。
「ク、クリスマスプレゼントをね、渡そうと思って捜してたんだよ」
自分の感情を誤魔化しながら、裁が袋から手編みのマフラーを取り出し、ジンクの首に巻いていく。
「……どう? 暖かいでしょ。えへへ〜、一生懸命編んだんだよ♪」
えっへんと胸を張りながら、裁がマフラーの説明をし始めた。
「実は俺からも」
後ろ手に隠し持っていたプレゼントを取り出し、ジンクが緊張した様子で彼女に渡す。
それは銀細工で出来た薔薇のブローチ。
「……」
不意に訪れる沈黙。
それからどちらともなくサクヤ様を見上げ、色気のある話は一切抜きで、まったく関係のない雑談に花を咲かせる。
それから、しばらく時間が経った頃。
「そろそろ戻らないと」
裁が帰りの準備をし始める。
その言葉を聞いた途端、ジンクが名残惜しそうな表情を浮かべた。
それは裁も同じ気持ちであったが、あえて口には出していない。
果たして、この感情は……一体!?
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