●〜円舞曲〜
とある豪華なホールで、姉ドニョロと弟ドニョリンは、手を取り合いながら、一緒にダンスを踊っていた。
男性は常に女性をリードするものだという考えを持っているドニョリンは、何とか(大好きな)姉をリードしようと必死な様子。
そのせいでいつもよりも気合が入っており、ドニョロの足やドレスを踏まないに気をつけ、足元に注意を払うようにして、慣れないワルツを踊っている。
『その間も失敗したら、どうしよう』という気持ちがあるため、どうしても動きがぎこちなくなっていた。
ドニョロはそんなドニョリンが可愛いと思いながら、弟のペースに合わせて踊っている。
「……あれ?」
不思議そうに首を傾げながら、ドニョリンが例えようのない違和感に襲われた。
いつの間にか、姉にリードを取られていたらしく、まるで操り人形の如く身体を動かしていた自分に気づく。
最初は自分のプライドが傷つけられてしまった事にショックを受けたが、それ以上にここまで自然に自分のペースに持っていった姉がすごいと素直に思った。
「ふふっ……」
そんな事などまったく気にせず、ドニョロが優雅にダンスを踊る。
この時点で完璧に姉のペース。
そのため、ドニョリンがどんなに頑張っても、ドニョロのペースを乱す事が出来なかった。
そうしているうちにワルツが終わり、ドニョリンが心底疲れた様子その場にへたれ込む。
ワルツを踊っている最中、隙を見て何度か自分のペースに持ち込もうとしていたが、姉の方が一枚上手だった事もあり、まったくと言っていいほど、そのチャンスが訪れなかった。
「よく頑張りましたね、ドニョリン」
ドニョリンにやさしく声をかけながら、ドニョロが弟の額に優しくキスをする。
その途端にドニョリンの顔が真っ赤になり、それを誤魔化すようにしてクールを装った。
だが、あまりにも嬉しすぎたため、ドニョリンの心の中では盛大なパーティが始まっていたとか、いないとか。
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