●舞い散る幸せの中で
一緒に過ごす2度目のクリスマス。
ふたりで手を繋いで、綺麗なイルミネーションの中を歩きたい瑠流衣は、少し恥ずかしそうにしながらも何も言わず、類に片手を差し出す。すると類もそれが何を言おうとしてるのか分かるから、黙って瑠流衣の手を取り笑いかける。
繋いだ手から感じる事ができる、相手の存在。
冬の夜はこんなにも寒いのに、何故だかそれほど寒さを感じないのは、きっと隣に大好きな相手がいるから。
「寒くないか?」
「うん、大丈夫」
瑠流衣に声をかける類はいつもと同じように見えて、いつもと同じではなかった。
コートのポケットに手を突っ込み、持ってきたプレゼントを指でなぞる。
これを渡すタイミングと場所に迷っていたのだった。
「あ、雪……」
歩いていた瑠流衣が立ち止まり空を見上げる。類も隣の彼女の横顔を見てから空を見上げた。
チラチラと、粉雪が降り始めた。
キラキラ光る、イルミネーションの中、舞い降りてくる白い雪。
「瑠流衣」
「……?」
類の声に空を見上げていた瑠流衣の視線が、彼の方に向く。けど彼はそれ以上何も言わなくて、瑠流衣は不思議そうに彼の視線を追っていく。
追っていった先は彼の掌の上で。そこには小さなリングケースがひとつ
「給料もない身では、それを何ヶ月分もの本格的なものまでいかないが……」
類の言葉を聞きながら、瑠流衣はリングケースを取り蓋を開ける。
そこには欲しいと思っていた物があった。
シンプルな作りのシルバーのペアリング。
決して彼女はそれを口に出しわけではないのに。類は彼女がそれを羨ましそうに目で追っていたのを知っていたのだった。
「先輩?」
「今日のこの日の、記念になりそうかな?」
あまりにも感動して声が出ない瑠流衣に、リングケースから彼女用の指輪を取り出すと、彼女の指にはめる類。
瑠流衣もそれにならって、類の指にもうひとつの指輪を嵌める。
どちらからともなく体を寄せ合い、抱きしめ合う。
お揃いの雪の結晶もあるけれども、これはもっと特別。
銀の誓い。
指輪に彫られた互いの名前。
それに永遠の愛を誓う。
抱き合ったままのふたりは光に抱かれ、空から白い雪の祝福を受けた。
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