奇亜求・清和 & フェイラ・ノースウィンド

●初めてのお姫様抱っこ?

 クリスマスイブの学園は、あちこちで催されているパーティーでとても賑やか。
 その賑やかさもいいけど、すこし静かな所でふたりで過ごしたいと、清和とフェイラは外へ散歩へと出かけた。
 少し遠くで聞こえる、学園の喧騒を聞きながら、並んでゆっくりと歩いていく。
「清兄さん、一回やって欲しい事があるんですが……」
「何だい?」
 歩いていた足を止めて、清和の方を見上げるフェイラ。
 彼女が歩くのをやめると、自然と清和の足も止まり、少し後ろになったフェイラを見るために、ゆっくりと振り返り優しく声を掛ける。
 清和に尋ねられても、恥ずかしいのか少し俯き加減で、チラリチラリと清和を盗み見るものの、なかなか言葉にできなくて。
「あ……あの」
 何度か言葉にしようかと思うのか、恥ずかしくすぐにまた俯いてしまう。
「あの、お、お姫様抱っこをして欲しい……の、ですが……」
 何度目かでようやく、願いを口にしたフェイラだったが、言葉尻になるにつれて、次第に声が弱く小さくなっていく。
 しかし清和の耳にはしっかりと届いていた。
「そうだな……」
 思わせぶりな返事を返しながら、ゆっくりとフェイラの方に歩み寄り。
 ほんの少し悪戯に少し考えている風に装いながら、清和はフェイラの隙をつくように、ひょいと彼女の体を横抱きに抱きかかえる。
 フェイラの念願のお姫様抱っこ。
 すぐ近くで感じる互いの存在。
 すぐ近い顔と顔。
 さっきまでは感じなかった、どこか照れくさい雰囲気。

 なんともないと思っていた清和も頬を少し赤くしながら、大事に大事に。我が姫、フェイラを抱きかかえ歩いていく。
 フェイラもまた、恥ずかしいながらも彼の首に腕を絡ませ、彼の体に体を寄せていた。
 こうしてふたりは少し、普段と違う照れを感じながら、ゆっくりと散歩を続けた。




イラストレーター名:緋烏