カイル・フレイル & 歯車・零香

●ログハウスにて

 結社の部屋の中の暖炉は温かく炎が灯っている。
 窓から外を見上げると、雪がチラチラと降り始めていた。
 暖炉の前で座っていたカイルが立ち上がり、零香の手を掴んだ。
「ちょっとさぶいけど雪見いひんか?」
 楽しげに笑うカイルの言葉に、零香は静かに小さく頷いた。

 カイルに連れられる様に、ベランダへと出てきたふたり。
 雪は思っていたよりも前から降っていたのか、だいぶんと積もっていた。 
 漆黒の夜空から舞い落ちる雪と、今まで見ていた物が白い雪に覆われて、部屋の灯りでぼんやりと映し出されるのはとても幻想的な光景。
「綺麗です……」
 その風景に零香が呟くものの、温かい部屋から寒い外に出てきたのが堪えたのか、寒そうに少し震えている。
 そんな零香に気がついたカイルが自分が巻いていた、長いマフラーをほどき、自分と零香を一緒に巻く。
「これでさぶくないやろ」
「は、はい!」
 密着する程に近い互の体。
 聞こえるカイルの声が直ぐそこで、見上げればすぐそこに笑っている彼がいて、返事をするものの零香は頬を赤く染めていた。

 静かに体を寄り添い合い、雪を見ていた。
 その静寂を打ち破ったのはカイル。
「そや零香に渡す物があるんや」
 突然何かを思い出したかの様に言葉を発し零香の方を見るカイル。その彼の姿に、不思議そうに零香は首を傾げる。
「クリスマスプレゼントや。受けとってな」
 カイルがポケットから取り出したのは大切な人が幸せになれるといわれている、絆の指輪。
「うれしいです、ありがとうございます」
 突然の出来事に驚きを見せる零香だったけど、それはすぐに嬉しそうな笑顔に変わり、受け取った指輪を指に嵌める。
「メリークリスマスや」
 そんなカイルの言葉の後、どちらからともなく、体を更に寄せ合い互いの顔を見つめ合い。
 重ねる唇。
 先ほどまで感じていた寒さは感じられず、相手の体温が心地よく、相手を感じる唇がとても熱く感じた。

 雪が降る中、二人は飽きるまでそこで体を寄せ合い雪を眺めていた。




イラストレーター名:meiz