御劔・学 & 橘・右京

●SuiteSuiteXmas

 テーブルの上には、とりどりのクリスマス料理。そして一際目立つのは、真ん中に置かれたブッシュドノエル。モミの実に模して乗せられた真っ赤なベリーが、とても可愛い。
「たくさん準備しておいたからな? ゆっくり食べてくれぃ」
 学がチキンを切り分け、その上にトロリとソースをかけてくれる。
「ん……ありがと」
 お皿を受け取りながら、右京は口許を綻ばせた。
 今夜はクリスマス。
 自分のために、学がたくさんの料理とケーキを用意してくれたのが嬉しい。けれど本当は、それだけではなくて、……部屋に招いてくれたこと自体が、嬉しい。
「どうした?」
「……なんでもない! 美味しそうだね、頂きます!」
 ぶるぶると頭を振って、右京はフォークを手に取った。
 内心の嬉しさを隠して、できるだけ表情を変えないようにもくもくと料理を食べる。そんな右京を、学は楽しそうに眺めていた。
 チキンも、サラダも、どれを口に入れても信じられないくらい美味しい。それは今日が特別な日なだけでなく、恋人との食卓だから。
 食事の時間は、幸福感に満ち満ちて過ぎて行く。
 そして、デザートはやっぱりケーキ。
「右京、クリーム付いてるぞ?」
「どこ?」
 もくもくとブッシュドノエルと向き合っていた右京は、学に言われて顔を上げた。
 チョイチョイ、と学が指で示すのは右頬。右京が自分の頬に手を伸ばそうとした、その時。
「違う、そこじゃない」
「え?」
 学の声は、笑みを含んでいる。するりと耳元に指が触れて、右京は学に引き寄せられた。
 顔と顔が、近い。心臓が跳ねる。あ、と声を上げる間もなく、唇に触れて、離れた、暖かな感触に右京は瞠目した。
「ん……甘いな……」
 呟いて、学はペロっと自分の唇を舌で舐める。その感想は、クリームへのものか、それとも恋人の唇へのものか。彼の瞳は、悪戯っぽく笑っている。
「むぅ……この助平……」
 不意打ちで、キスされた。少し怒ったように、右京は唇を尖らせた。
 あんまり驚いてあげるのもなんだか悔しくて、右京は精一杯冷静に、もくもくと一気にケーキを食べて行く。けれど、頬が染まるのは隠し切れない。
「……紅茶のおかわりを淹れようか?」
 笑う学に、右京はケーキに乗ったベリーのように真っ赤な顔で、こくりと頷いた。
 ケーキの甘い匂いと、紅茶の香り。
 次のクリスマスも、その次のクリスマスも、こんな時間を重ねて行きたい。言葉に出さずとも恋人達は同じことを思っていた。




イラストレーター名:TANAH