●薔薇の徴
溢れかえる芳醇な薔薇の香り。
広い庭園の中のバラ園で、ヴァナディースとともののふたりきり。
とものを見るヴァナディースの瞳はとても優しげ。そして彼女の首にはとものから貰った、向日葵の木製の指輪が首飾りとして彼女の胸元を彩っている。
向日葵はとものを象徴する花。
「派手で……じゃなくて、綺麗でスュールみたい」
とものが薔薇を見てそう言ったから、ヴァナディースを象徴する花は薔薇。
だから今日は、真紅の薔薇のドレスに身を包み、自分が見立てた空色のドレス姿のとものを慈しむように見つめる。
とものからもらった指輪が、ヴァナディースの胸元で揺れる。
彼女から貰った、彼女の象徴。
だから故にか、それともそれが必然だから。
ヴァナディースもまたとものに、自分の主張を身に付けさせたいと思って見つけたルビーの指輪。
それは目の前で、じっとヴァナディースを見つめる、とものの瞳の色にもよく似ていた。
ルビーの指輪に綺麗なチェーンを通し、ネックレスにするとそれをとものの首にかける。
「愛しているわよ、ともの♪」
薬指に指輪を嵌められるのかと思っていたとものは、ぎこちない指先で胸元を彩るルビーの指輪を触って見た後、どきどきした後ヴァナディースを見つめる。
まだルビーの指輪には、ヴァナディースの体温が残っているような気がする。
互いの花を交換し、身に着ける。
そんな事を考えると、とものの頬が朱に染まり行く。
意識せずに、勝手に頬が赤くなっていくのをともの自身も分かり、ここは何か言わないとと、必死になって考える。この際、クリスマスだし欲しいゲームでも強請ってみるのもいいかもしれないと、とものの唇が動く。
「だ、大好き!」
予想していた言葉と違って、物凄く驚いたのはともの自身。
ヴァナディースは笑み、とものの身体を抱きしめる。
「大好きって言ってくれたあなたは、一生、私のもの♪」
近づいた顔と顔。
微笑みながらのヴァナディースの言葉に、とものの顔は更に赤くなる。
そしてそのまま、瞳が閉じられて重なる唇。
思う存分抱きしめあって。
思う存分キスを交わして。
直接、自分の徴をアナタにつけてあげる。
それは秘密の薔薇園での、クリスマスの出来事。
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