●クリスマスに公園で
学園のクリスマスパーティーを思う存分楽しんできた螢と夜半。
リースを作って、スープを一緒に飲んで……。
ふたりの楽しい思い出ができた、今年のクリスマスパーティーから、二人並んで帰る帰り道。
なんとなく小腹が空いた様な、少し物足りなさを感じて、公園のベンチで二人で肉まんを食べる事にした。
夜半は肉まん。
螢はカレーまん。
それに寒さ防止の缶コーヒー。
「いっぱい買ってきたのですよ。ここのはふくふくでほこほこで、とっても美味しいのですよー。缶コーヒーも買ってきたので、あっちのベンチで一緒に食べるです?」
沢山の肉まんを抱えた夜半が嬉しそうに、公園のベンチを指差した。
ベンチに二人並んで座る。
「りん先輩はカレーまんですね。大きいのにしたのですよー」
楽しげに夜半は袋からカレーまんを取り出し、螢へと手渡す。
「そのまんまでも美味しいですけど、りん先輩と一緒だともっともっと美味しくなるのですー」
美味しそうに肉まんを食べる夜半を見て、何となく自分も嬉しくなる螢。
彼女が無邪気に美味しそうに肉まんを食べているのを見ていると、ちょっとした悪戯心がわき出した。
それは丁度夜半が、半分ぐらい食べた所でだった。
「な、夜半」
「……はうっ!?」
軽く夜半に声を掛けるものの、間髪入れずに彼女の体をぎゅっと抱き寄せて、そのまま彼女が手に持っている肉まんに齧り付く。
一瞬の出来事に夜半は驚き、螢が自分の肉まんに齧り付いているのを見て首を傾げる。
「りん先輩、足りなかったです? 肉まんのほうがよかったです??」
「ちょっと味見な」
慌てて少し上擦った声で尋ね返す夜半に、螢は悪戯っぽい笑みを浮べてそのままの態勢で、自分が持っていたカレーまんを彼女の方へと差し出す。
「ほら」
「う? えと、食べてもよいのです? あう………んと、いただきます、です」
カレーマンを差し出されてどうしたものかと一瞬考えたけど、すぐに彼女も螢がするように彼のカレーまんへと齧り付く。
「んと、んと、とってもとっても美味しいのです」
「んー、中華まんも良いけどやっぱこっちの方が暖まるな」
「ん、とっても暖かいのです……」
「もう少しこのままでいようか」
カレーまんもとても美味しくて、顔を綻ばせる夜半を更にぎゅっと抱きしめる螢。
肉まんも温かいけど、こうして体を寄せ合っている方がもっと温かいのを知っているから、螢の言葉に夜半は顔を赤くしながら頷いた。
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