永倉・エイゼン & 神楽坂・燈子

●ずっと一緒…二人だけの約束を。

 庭園にはいろんな冬の花が咲いている。沢山の人が訪れる中、ポインセチアに囲まれたその場所は、そこだけ喧騒から隔離されているかのように、とても静かだった。
 そんな庭園の一角で、クリスマスらしく飾り付けられたコウヤマキが見守られながら、一組の恋人がティータイムを楽しんでいた。

「あ、お代わりいるか?」
「ありがとうございます」
 燈子のティーカップが空なのに気付き、そう問いかけたエイゼンに、燈子はこくりと頷き返した。
 もうこれで、何杯目になるだろうか。その素敵な香りと味で2人を楽しませてくれた紅茶は、とうとうこれで最後になってしまった。美味しいお茶菓子と紅茶をお供に、2人が交わした話題は、数えればキリが無い。充実した、とても楽しい時間を2人は過ごしていた。
「そうだ。……燈子」
 ポットを戻し、エイゼンはジュエリーボックスを取り出した。中には、2つの指輪。サイズ違いのお揃いで用意されたそれは、標準的なサイズよりも少し小さい。それは、2人の小指にぴったりなよう、予め用意しておいた物だった。
 大きいリングはエイゼンの物。小さなリングは燈子の物。
 それぞれに、互いの大切な人の名前が刻まれている。
「指、いいか?」
「はい……」
 先にリングを取ったのはエイゼンだった。おずおずと燈子が出した手を優しく取ると、そっと、その小指にリングを嵌める。
「じゃあ、エイゼンさん」
 今度は燈子が反対にエイゼンの手を取る。彼の小指にリングを添えて、通そうとするものの、なかなかスムーズにリングが進まない。焦りそうになる燈子に、大丈夫だからとエイゼンは苦笑して。やがて、ちょっぴり悪戦苦闘しながらも、リングは無事エイゼンの小指の根元まで辿り着く。

 互いの小指に、互いの名を刻んだ指輪。
 大切な人の名前が、自分の小指にある。
 それは、ずっと一緒にいようと、そう誓った証だ。

 ……だから、今ここにその指輪があるという事実が、なんだかくすぐったくて。
 視線を交わした2人は、どちらからともなく照れ笑いする。
 嬉しさと喜びと、何よりも心の底から湧き上がる幸福感に満たされながら……。
 いつまでも、そう微笑み合っている二人を祝福するかのように、空からは雪がふわりと舞い降りた。




イラストレーター名:ぴろきち