緑川・玲陰 & 昂式・雲幻

●Con te in eterno

 粉雪が舞うクリスマスの夜。公園では中央にある噴水がライトアップされていた。
 同じシルバージャケットに身を包んだ玲陰と雲幻は、人の気配のしない公園の中を、手を繋いで歩いていた。水音と共に光を振りまく噴水の前で、2人は不意に足を止めた。
「しかし、まさか俺に彼女が出来るなんてな……」
 ジャケットの襟元を、少し恥ずかしそうに雲幻は直す。
 ペアルックにしようと言い出したのは、玲陰の方だ。顔を真っ赤にして、勇気を振り絞った様子で言われたら、雲幻に断れるはずがない。……むしろ喜んで着たのだが、でもちょっと恥ずかしくもある。
「もっと自信を持て。私は貴様だから惚れたのだ」
 笑みを浮かべながらキッパリと玲陰が言う。恋人が自分を信頼してくれていて、嬉しいような照れくさいような顔で雲幻は頬をかいた。
「ありがとな、でも正直俺は幸福すぎるかもな。結社立てて、団員来てでっかくなって、彼女まで出来てさ……後が怖いな」
 これが噂の死亡フラグ? なんて冗談めかして言う雲幻。玲陰は、そんな彼の正面に立つと、正面からじっと雲幻の顔を見つめる。
「どんな不幸があっても、どんな事態になろうとも、私は……いや私達は雲幻を裏切らん。私達が集えば不幸など乗り越えてみせる。どんな事態でも負けん、必ず勝って結社に帰る……私達には帰る場所がある。そうだろう?」
 彼女の真剣な言葉に、雲幻は自分が情けなくて涙が出そうになった。こんなに玲陰が愛してくれるなら。こんな風に心配してくれるなら。どんな困難でもきっと、笑って話せる日が来るだろう。
 泣きそうな顔を見られたくなくて、雲幻は玲陰を抱き寄せた。
「……ありがとうな」
 滲みそうになった涙をぬぐい、雲幻は笑顔を見せると、もう一度玲陰を抱き寄せる。少し背伸びをして、見上げるような体勢で自分を見る玲陰の頬に、そっと唇を寄せる。目を閉じたまま受け入れた玲陰と、雲幻は長い、長いキスをする。

 あなたと永遠に。
 口を離し、照れたような顔を見せる玲陰を、もう一度抱きしめ、雲幻は幸せそうに笑う。
 ……そしてやがて、恋人達はライトアップされた噴水を背に、手を繋いで再び歩き出した。




イラストレーター名:アルミ