七儀・唯冬 & 玖駕乃・深稜

●遊園地襲撃!〜Xmas2008〜

 初めてのデートは、クリスマスの遊園地。
 そもそもあまり遊園地に行ったことのない唯冬は、早くもちょっとテンション上がり気味。
 対する深稜はといえば、同じく久し振りの遊園地だというのに、何とな〜くボンヤリ気味。
(「朝弱いのに、緊張してなかなか寝付けなかったからなー……」)
 本当は、朝から張り切って過ごしたかったのに……。
 まだ頭が寝ている自分が憎いと、眉間に皺を寄せる深稜。
 その様子に唯冬は、彼は朝が苦手なのだろうかと首を傾げた。
(「このままだとはぐれるかも……」)
 唯冬はそう思い、深稜に手を差し出した。
「繋いでた方が良いかな?」
「……? え、手?」
 一瞬、何の事だか分からなかった深稜だが、それが互いの手の事だと気付いた途端、ばぁっと頬を朱に染めて、慌て手首を左右に振った。
「でも、なんか危なっかしいし……、それに、置いてかれるのは寂しいよね」
「そ、そんな、大丈夫ですよ、さすがにはぐれないかと、というかそれは、照れま…っ……」
 深稜はしどろもどろになりながら、一応反論してみたが、どうにも今ひとつ説得力がないうえに、本音まで危うく零しそうになった。
 しかしその言葉に、今度は唯冬が慌てはじめる。
「い、いいから、ほらっ!」
「……え、でも……はい、繋ぎます……」
 結局唯冬は勢いに任せ、そして深稜はその勢いに押され、2人は手を繋ぐことになった。

 けれど……。
 いざ手が繋がれると、その緊張感と恥ずかしさは並ではない。
(「俺、顔赤くなってるかも……」)
 もう手遅れ気味なのだが、それでもばれないようにとちょっぴり顔を逸らす深稜。
(「な、何か気が紛れるものないかな……!」)
 きょどきょどと、あちらこちらへ視線を彷徨わせる唯冬。
「……あ! あれ!」
 その視界に、まるで救いの神のように現れたのは、遊園地のマスコット達だった。
「あれ、マスコットだよね?」
「……え? あ、はい、マスコットですね……」
「ね、写真撮ろうよ! 行こう!」
 言うが早いか、唯冬は深稜の手を握ったままで走り出した。
「……って、写真撮るんですか……?」
「そう! 一緒に撮ろう!」
「え、俺も……!?」
 驚いたように目を丸くする深稜に、唯冬は勿論と言わんばかりに楽しげな笑みを向けた。
「……は、はい…っ!」
 そんな笑顔を向けられれば、もう答えは他にない。

 はてさて。
 2人は一体、どんな顔で記念写真におさまるのやら………?




イラストレーター名:ヤガワ