香月・風音 & 美堂・白髏

●初めてのクリスマス―時間よ、どうかこのままで―

 賑わうパーティーを抜け出し、辿り着いた先はライトアップされたツリーの前。
 二人は辺りを見渡して、思わず笑みを浮かべた。
 どうやら、二人以外、誰もいないらしい。
「やっぱり最後は、2人きりがいいですね」
 白髏は嬉しそうにそう告げる。
「うん。やっと2人のクリスマスになったね」
 風音も嬉しそうに頷いた後、顔を見合わせ、また笑顔に。
 あそこに行ってみたい、こんなことをしてみよう?
 これから二人で過ごしていく時間を想像しながら、あれこれと話していく。

 思い返すと、始まりはただの友達。
 とある結社で出会い、言葉を交わしていくうちに、気づけば一緒にいることが増えていった。
 互いの想いを確かめ合ったのは、つい先日のこと。
 積み重ねてきたものは、まだ少なく。
 だからこそ、これから一緒に作っていこうと強く強く約束を交わしていた。

「ちょっと、寒くなってきましたね」
 白髏がふと、顔を上げる。
 時計の針はいつの間にか、夜の11時を告げていた。
 夜風の冷たさに白髏は思わず、身を震わす。
「そうだね。……じゃあ、こうしようか」
 何かを思いついたかのように、風音はそう告げて。
 白髏を背中から、ぎゅっと抱きしめた。
「大好き……だよ」
 白髏の耳元でそっと囁く。
「……!!」
 思いがけないその言葉は、白髏を驚かせるのに充分なもの。
 けれども嬉しいその言葉。
 すぐには返せないけれど、気持ちは伝えたくて。
 風音の手にしっかりと自分の手を重ねる。
 この心音、相手に伝わっているのだろうか?
 そう思いながら、白髏はやっと口を開くことができた。
「うん、あったかいです」

 音も無く、風音の瞳から一滴の涙が零れ落ちた。
 白髏は祈るように、その瞳を閉じる。
 願いを込めて、二人は同じ言葉を紡ぐ。
「メリークリスマス」
 どうかこの幸せな時間が、いつまでも続きますようにと。




イラストレーター名:マメ太