●特別なWhite holy night
クリスマスの夜。
いつもはあまり外に出る事はないのだが、特別な日と言う事もあり、ふたりの大切な時間を別の形で過ごしてみようという事になった。
その判断は間違っていなかったと確信したのは、目の前の光景を見た瞬間……。
夜の闇の中でも輝くクリスマスツリー。
周りのイルミネーションは人の気持ちと同じく賑わっている。
「たまには、外も良いもんだな？」
ゆっくりと辺りを見回し、遥斗が何気ない言葉を口にした。
外の景色はすっかりクリスマス一色になっており、いつもの町並みとは違った印象を受ける。
「そう……ですね。……綺麗です」
遥斗の問いかけに、夜那が嬉しそうに頷いた。
冷たい風が頬に当たる。
だが、それが気にならないくらい、ふたりは寄り添っており、握られた手も離れる事はない。
（「……これから先も２人の時間を積み重ねていけたらな」）
クリスマスツリーに目をやり、遥斗が心の中でそんな事を考えた。
隣で微笑む夜那が愛しくて、つい抱き寄せて……。
「わわっ？！」
突然の出来事に驚き、夜那がバランスを崩す。
夜那は彼女の温もりを確かめるようにして、力強くしっかりと抱きしめた。
ふと……、先程のイベントを思い出した。
クリスマスカードのお礼に貰った夜那からの口付け。
あの時の夜那はだいぶ緊張しており、とても可愛らしかった。
その姿を思い出して、遥斗がくすりと笑う。
「……ほ、本当に恥ずかしかったんですよっ？！」
あまりの恥ずかしさに顔を赤らめ、夜那が大きく頬を膨らませる。
「ほら、怒るな、怒るな」
彼女の機嫌を取りながら、遥斗が笑みを浮かべて、ポンポンと頭を叩く。
「それじゃ折角だし俺からもお返し」
そう言って遥斗は返事を待たず、彼女の唇を奪う。
いつもより短い、軽くて優しいキス。
彼女が動揺してパニックに陥らないように、遥斗からの心遣い。
「来年も一緒に特別な日を過ごそう」
何か言いかけて、照れて微笑んだ夜那を見つめ、遥斗は先ほどのイベントと、同じ言葉をもう一度囁いた。
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藤乃・夜那 
