●聖夜に誓う永遠
「和真ぁ、あっちのイルミネーションとっても綺麗ですよぉ〜」
和真の腕に腕を絡めたまま、ほのりが示す先には鮮やかに彩られた一軒の店があった。サンタや小人、トナカイに妖精。電飾に照らされた人形はウィンドディスプレイ用なのだろう。こういった光景もクリスマスの街ならではだ。もっとも、店は店でこの時期かき入れ時でもある。客を呼び込むべく店からは音と光が溢れ、二人に限らず腕を組んだ恋人達は店と店の間を楽しげに談笑しながら歩いている。
(「……幸せだなあ」)
腕に伝わる温もりと、すぐ側にある楽しげな笑顔。幸せを噛みしめ、知らず知らずのうちに和真の顔も綻んでいた。
「どうしましたぁ〜?」
「いや、何でもないよ」
自分の顔を覗き込んでくるほのりに和真は笑顔で答えて、視線を彷徨わせる。電飾の絡みついた街灯、玩具屋の窓にある何処かで見たようなピンクのぬいぐるみ、吐息に霞む夜空の三つを経由して和真の視線が止まったのは遠くからでもわかるほど大きなツリーの先端。
「ほのり、あそこに行ってみない?」
ライトアップされたツリーはこの距離からでもわかるほど大きいのだ。デートスポットとしてもってこいなのか、視線をツリーの根元へと降ろして行けばちらほらと先客達の姿も見える。呼びかけた言葉に、ほのりは小さく頷いた。
「大きいですねぇ〜」
「ほのり」
近くに寄ってみたツリーは和真が思った異常に立派だった。ツリーを見上げて感嘆の声を上げる恋人の名を呼ぶと、和真は再び笑顔を浮かべた。
「……今日は、ありがとうね」
「私も楽しかったですから〜」
一緒に付き合ってくれて、と続けた言葉にほのりは笑顔で応えてくる。その笑顔が直視できないほど眩しく感じたのは電飾のせいではないだろう。和真は小さく笑ってほのりとの距離を詰める。和真の手がゆっくりと背中に回されて、抱きしめられたほのりと和真の距離は0になった。
「……ほのり。愛してるよ」
身体の距離に続くように二人の顔は近づいて、和真の唇がほのりの唇へと落ちる。
(「今この時が……時間が止まれば良いのに」)
息を止め目を閉じて、和真は思う。目を開ければすぐ目の前にほのりの顔があることを唇の感触は教えていた。幸せの時。
「来年もそれから先も……」
一緒にいれればいいのになあ、と思いながら和真はゆっくりと目を開ける。
(「いや、永遠にほのりと一緒にいよう」)
目を開ければそこにあったのは赤く頬を染めたほのりの顔で、心中で頭を振った和真は希望を誓いへと変えた。永遠に一緒にいることを、永遠に愛することを。
「和真ぁ?」
いつの間にか目を開け、怪訝な顔をしていたほのりを和真は再度抱きしめる。心の中で誓ったばかりの言葉を確認するかのように。
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